県議会予算特別委員会
平成21年3月4日 竹内質問と答弁について
予算特別委員会の質問と答弁をまとめましたので公開します(3月19日)。
今回は新行革プランの変更が議案として提出されていたため、「新行革プラン」、特に財政フレームに関する質問をせよということで会派の要請により委員外議員として質問したものです。質問事項に制約があり、肝心なことを聞いていない、少し不自然な聞き方になっているのはそのためです。何卒ご了承ください。
◆議事録の公式速報版は数ヵ月後に兵庫県議会会議録閲覧・検索システムで公開されます。
答弁側の協力により、こちら側でビデオチェックなどをするような必要もなく、当ページが作成できました。
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質問要旨(クリックすると質問の該当箇所へ飛びます) 質問通告日3月3日
質問・答弁全文
[ 小田予算特別委員長の指名により質問]
民主党・県民連合、姫路市選出の竹内英明でございます。私は予算委員ではありませんが、委員外議員として行革関係について質問することとなりました。よろしくお願いします。
ネット中継からのキャプチャー映像
項目 |
質問・答弁 |
1.財政フレームの見直し
(1)県税収入の下方修正について
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先程、行革関係の質問もありました。重複をさけながら質問していきたいと思います。
まず今回の新行革プランの変更点で最も大きいことは、「財政フレームの見直し」と「法人県民税の超過課税の延長・使途の見直し」だと思いますが、前者はこれから質問するとして、後者については、県議会でも評価が分かれていた「県民交流広場事業」から「子育て支援」に重点が置かれることとなりました。各小学校区に1300万円の予算をつける「県民交流広場事業」が始まったとき市会議員でしたが、いま議員や職員の皆さんの給与をカットしてまで財政難に立ち向かっている中で、「1300万円で何をしようか」「県はお金があるんですね」と言われたことがあります。県民の皆さんに財源が別なんですと説明しても不思議に思われる。今回、「子育て支援」等に内容が大きく変わり、5年間で約100億円が「育児休業助成」「保育園・認定こども園の整備」「妊婦健診」や「こども医療費助成」へと使われることになります。本来一般財源で実施すべき施策ではないかという声も聞きますが、私は大変素晴らしいと評価をしておりますので、この点については質問いたしません。兵庫の次代を担っていく子どもたちのために貴重な財源を使っていただきたいと思います。
これから順次通告に基づいて質問していきたいと思います。まず、「1.財政フレームの見直し、(1)県税収入の下方修正について」です。資料の中の財政フレームを見ながら質問しますが、この財政フレームの制定のスタートから振り返ってみますと私が県議になった平成19年の秋にこの財政フレームが示されて、今1年半が経過するわけですが、県税等の収入については今回3度目の下方修正となりました。具体的に「平成21年度の県税等の予想額」について下方修正の変遷を見ますと、1年半前の平成19年9月の見通しでは平成21年度は9,030億円が見込まれていました。行革特別委員会では内閣府の経済見通しは当時の安倍内閣の上げ潮路線を前提としたもので楽観的すぎると強く警告し、2ヵ月後の平成19年11月に内閣府の経済成長見通しに本県との乖離率0.85をかけ60億円下方修正して8,970億円としました。ところが、その3ヵ月後の平成20年2月には、実際の県税収の落ち込みにあわせ更に430億円を下方修正し、8,540億円となりました。そして今回のフレーム修正では2170億円下がってこのフレームに書いてある通り6,370億円となっています。今回のフレームから地方消費税清算金収入の約984億円が特別会計へ移っておりますので、これを除いて比較すると、今回の下方修正は約1100億円ということになります。短期間でめまぐるしい下方修正です。平成30年度の県税等の収入では、最初1兆2,260億円が、今回7,780億円ですね。地方消費税清算金収入をのぞいても3000億円以上の見込み違い。こんなことでは誰もこのフレームを信用しなくなります。
今回のフレームは国の急速回復と順調回復と停滞シナリオの3つの中で順調回復シナリオを選択しておりますが、以前から指摘していますが、小泉内閣の「基本方針2006」の考えが前提で、国の歳出を14.3兆円も削減し、規制緩和や企業負担の自由度の拡大により、効率的な政府となり、自由な経済活動で税収増を生む。社会保障費も5年間で毎年2200億円を削減するというあの計画です。経済が好調となって増税も必要なくなるという上げ潮路線。この話は今や与党内でも批判されている話で私はこの路線でいけるとは思えませんが、県としては責任を持って税収を厳しく見積もったので「これで下方修正はもうない」ということでいいのでしょうか。まずこの点を確認させていただきたいと思います。
(答弁)古川 財政企画参事
財政フレームにおける平成30年度までの税収見通しについては、県税事務所の見込みをもとにした平成21年度の税収見込みを発射台に見込んでいる。その上で、経済成長率については、1月に内閣府が発表した経済成長率のうち、期待値の極めて高い急回復や経済対策の効果を考慮しない底ばいではなく、両者の中間となり、経済雇用対策が一定の効果を持つ順調回復シナリオに本県の乖離率0.85を乗じた上で見込んでいる。現時点においては妥当な選択と考えている。
しかし、今後の経済動向が不透明であることから、税収見通しについても、毎年度の予算編成、行革推進条例に基づく3年に一度の総点検において、その時々の経済情勢を踏まえながら、適時適切に見込んでいく。仮に、この時点で大きな乖離が生じている場合は、その時点で財政フレームの変更を検討する必要があると考える。
(意見)
世界のトヨタでも決算を数ヶ月で3度の下方修正をしました。世界で一流企業でも経済の予測は難しいということです。しかし、楽観的な見通しに立って後で、後であわてて対策を立てるよりも、予想を厳しく立て、もし上方修正したら、その財源は別のものにあてる。今後も厳しい前提にたって税収見積もりをしてほしい。
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法人県民税の超過課税の充当事業内容一覧(第8期分−平成21年10月1日から5年間)
これまでの行革フレームの見直し時期と税収の見通し(時系列)
経済財政の中長期方針と10年展望比較試算(内閣府)
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(2)880億円の要調整額を県債管理基金を取り崩して対応した場合について |
次に、(2)880億円の要調整額を県債管理基金を取り崩して対応した場合について伺います。今回の修正提案では、先程からの議論でも出ていますが、前回の1兆2000億円に加えて新たに1025億円の収支不足が追加発生し、今回145億円の特別対策をとりましたが、なお880億円足りない。
この880億円は今後の予算編成の中で解決していくということで、財政フレームの実質公債費比率の見通しなどには反映させていないということです。880億円は言い換えれば、フレームの簿外の未処理欠損という状態です。いずれ処理しますが今回はこれで議決してほしいというもので、本来は望ましいものではありません。井戸知事は2月12日の記者会見の場で「この(880億円の)要調整額を仮に県債管理基金で全て埋めたとしますと、要調整額は十分埋まるわけですが、全て埋めたとすると何に響くかというと、実質公債費比率に響きます。」とこの880億円を全て県債管理基金で埋めて財源を確保した場合の影響を計算されています。また、知事は「県債管理基金だけに依存しない特別対策を今後とも検討していく必要がある」とも述べ、さらに「歳入面で特別な起債の活用」をあげ、「特別な起債の活用が難しい場合の最後のバッファーは県債管理基金になると思います」とも述べておられます。
★今回も特別財源対策として「行革推進債」という県債を発行していますが、名前は立派ですが、その償還年数は30年で交付税措置もなく、金利を含めた償還総額や将来負担を考えれば単なる債務の繰り延べです。880億円の収支不足を埋めるために、行革推進債のような地方債を新たに発行するより、県債管理基金を財源とした方が金利負担面ではメリットは大きいことははっきりしています。
★実質公債費比率ワースト1位の北海道の場合、「実質公債費比率の改善のみを目的として、毎年度の道債償還に必要な残高を有している減債基金への積み増しを行うことは困難」とし、「実質公債費比率が極力25%を超えることがないよう」中長期的に取り組んでいきますという方針が示され、平成22、23年度には、それぞれ25.3、25.1と25%を一時的に超える計画が公表されています。25%を超えれば、早期健全化団体となるわけですが、国に対して「財政健全化計画」の提出が義務付けられる一方、県民に対して県財政は厳しいと伝えることもできます。仮に880億円全額を県債管理基金で埋め合わせした場合、積立不足で実質公債費比率は上昇するわけですが、ピークで実質公債費は何%ぐらいに上昇するのでしょうか?また、数値が25%を超え、早期健全化団体となった場合の影響、実務面でのデメリットについてもあわせてお聞かせください。
(答弁)古川 財政企画参事
平成22年度以降見込まれる要調整額について、仮に、全額県債管理基金で取り崩した場合、県債管理基金の積立不足率が拡大し、平成30年度の単年度の実質公債費比率は約0.9ポイント上昇し、18.9%になると見込まれる。
また、行革期間中で最も数値が高くなると見込まれる平成25年度については、22年度から24年度までに280億円基金を取り崩すことが影響し、24.3%から0.6ポイント上昇して24.9%になると見込まれる。これは財政健全化法の早期健全化基準の25%にかなり接近する水準である。
実質公債費比率が、早期健全化基準の25%を超えた場合、財政健全化法に基づき、早期健全化計画を議会の議決を経たうえで公表し、早期健全化団体として財政再建に取り組むこととなる。
早期健全化団体は、自主再建段階と位置づけられているが、計画の策定、変更及び実施状況について国への報告が義務づけられている。さらに、国は当該計画の達成が著しく困難と見なせば勧告できることから、実質的には予算編成等において何らかの国の関与が生じるのではないかと思われる。
また、実質公債費比率が25%を越えると、地方債の許可基準において、庁舎、図書館、大学等の施設整備に充当される一般事業債、地域活性化事業債等の起債が原則として許可されないことなり、投資単独事業の計画が一部、制限されることとなる。
仮に、内閣府の経済底ばいシナリオで試算した場合の要調整額は880億円から約2,300億円に拡大し、仮にこれを全額県債管理基金取り崩しで対応した場合、将来負担比率は早期健全化基準の400%には達しないが、3カ年平均の実質公債費比率については、平成26年度25.6%、平成27年度25.1%と早期健全化基準を上回ると見込まれる。
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北海道公債費負担適正化計画
知事定例記者会見(2009年2月12日)
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(3)県民にわかりやすい財政状況について |
次に(3)県民にわかりやすい財政状況について、です。未だに県の財政状況が悪いということを知らない県民の方も多いのですが、数値を説明しても、何兆円とかいうケタだけでは実感がわかないこともあります。例えば家計用語に直すとか県民一人あたりの金額に直すとかして少しでもわかりやすくしなければならないと思っています。「県債」は家計では借金というべきものであり、「基金」は貯金であります。
「県債」「基金」それぞれ一般・特別・公営企業の全会計で21年度末には県民1人あたりいくらになっているのか確認したいと思って通告をいたしましたら、県議会事務局の作成した資料にわかりやすいデータが既に示されておりまして、自分で計算しましたら、県債額はは4兆6923億円で、基金は合計で1580億円でした。これを直近の国勢調査の県の人口で割ると、県民1人当たり「県債」は839,327円、一方で「基金」は28,277円でした。ということで質問はいたしませんが、借金は貯金の約30倍です。家計なら相当厳しいバランスです。平成18年度決算の時点では県債は73万8千円だったので、借金は3年で1人10万円も増えることになります。やはりこの厳しい現状を少しでも改善していかなければなりませんし、これだけの県債を発行しているのですから、そのリスク等についてもみていかなければなりません。
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一般・特別・企業会計の全基金と全県債残高(県議会事務局の作成資料抜粋)
県民1人あたりの基金・県債残高比較(竹内試算)
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(4)基金(貯金)と県債(借金)のリスクの反映について |
ということで、4点目、県財政の貯金にあたる基金や借金にあたる県債について、財政フレームでどうリスクをとっているかについて確認したいと思います。特に「金利」のリスクです。駒沢大学がデリバティブ取引での資金運用に失敗し、約145億円の損失を出して理事長が辞任したという報道もありました。本県の外郭団体でも3億円のオーストラリアドルでの外国債運用で、予想以上の円高が進み、利息がゼロとなってしまったという話、これは私が質問しました。このデリバティブ、日本語では金融派生商品と約される仕組みを含んだ預金、これを「仕組み預金」といいますが、これで資金運用しているのは全国約1800の自治体の中でも67だけ、4%に満たないそうです。しかし、兵庫県を含む県下の全自治体を調べてみたところ、県下に10市町ありました。県下の41自治体の4分の1です。具体的には神戸市、姫路市、尼崎市、明石市、伊丹市、篠山市、三田市、加東市、たつの市、佐用町ですが、全ての預金内容等を調べてみました。
デリバティブの内容は様々ですが、米ドル、オーストラリアドルと円との為替レートによって預金利息が決まるものが結構ある。詳しく見てみると、例えば、三田市さんは当初1年間は5%の利息が約束され、2年目以降はオーストラリアドルと円の為替レートによって利息が変動するデリバティブ契約で5億円を運用しています。利息は1豪ドルが88円以上なら契約通り5%、83円までは段階的に利息が決り、83円以下となれば、なんと利息は0.01%になってしまうというものです。5億の大口定期預金で0.01%の利息といえば、通常利息の100分の1以下ですね。この仕組み預金ですが、三田市さんが、預け入れした平成20年8月29日の段階では為替は1豪ドル93円でしたが、早くも6日後の9月4日には86円台をつけ、契約からすぐに5%利息の条件からはずれてしまいました。また、その2週間後の9月17日には81円台となり、預金から3週間もたたないうちに利息が0.01%に落ち込む83円の基準を割り込んでしまっています。その後、80、70、60円もわりこみ一時50円台もつけ、最近では60円台前半で推移しています。この契約では、変動金利が適用されるのは平成21年9月からですが、このままでは5億円預けて0.01%で年間5万円しか利息がつかない可能性がある。運用責任者の方は祈っているかもしれません。
しかし、もう一つ驚くべきことは実はこの仕組み預金の満期は平成50年3月20日なんですね。途中解約できない契約です。三田市さんでは他にも20億円、総額25億円の資金を仕組み預金で運用されていますが、責任者の方が平成50年まで在任されれば全てが満期を迎え、運用実績を総括できますが、あと29年先の話です。
また、加東市さんでは、5本のデリバティブを含む仕組み預金で総額9億3000万円を運用されていますが、当初契約での金利は全て5%か6%。直近の為替レートは全て円高にふれて、加東市に不利なレートとなっており、このままでは金利は最低保証の0.1%となります。これも満期が平成49年または50年というもので、中途解約ができないか、解約すると違約金で大きく元本割れします。運用総額の9億3000万円ですが、加東市さんの直近の決算をみますと、財政調整基金28億円を含む基金総額が約55億円ということですので、結構な比率をデリバティブで運用されていますが、このままの為替が続けば金利がほとんどつかないまま、なおかつ30年間使えないということです。もちろん逆に5%とか6%それ以上の利息となる場合もあるわけですが、リスクが高いですね。
県内10市町の仕組み預金の総額は577億円1900万円でしたが、実は、国民生活センターに寄せられている国民の苦情の中で、預金者が途中解約すると違約金を取られて元本割れをする金融商品の相談が目立っているという報道もありました。リスクは商品の説明書類に書いてあるのですが、実は少し読んでもわからない。金融に詳しくない人は手を出してはいけないとも言われています。元本割れがないとはいえ、30年間、平成50年まで解約できない契約で、金利もほとんどつかないというのは本来受けとれる金利が受け取れない遺失利益であり、損失であります。30年前、私が4歳の頃の物価を考えると今とは違います。これから30年後の価値を予測するのも簡単ではありません。ハイパーインフレともなれば紙くず同然になる可能性もあるわけです。
これら為替によって利息が変動する預金ですが、名称こそ「預金」ですが金融取引の実態としては「通貨オプション」という取引で、銀行等は仲介しているだけです。この通貨オプションは為替レートの動向によって取引相手が得をするかこちらが得をするかというもので「半か丁」かの勝負といっても過言ではありません。相手は金融のプロですが、簡単に損をするような条件を出しているでしょうか。今、企業でも資金繰りに窮して倒産するところがあります。自治体の場合思わぬ災害も起これば対応しなければならない。万一の場合は基金をとり崩して対応しなければならないこともあるでしょう。実は先程名前を挙げた自治体の議員にも確認したのですが、デリバティブを含む資産運用をしていることを全く知っておられませんでした。議会にデリバティブを含む預金をしますよという議決や報告をする必要も特にありません。
自治体の資金については、地方自治法やその施行令で「最も確実かつ有利な方法によって保管しなければならない」とされ、基金を設けて運用することもできますが、銀行や証券会社が役所に営業に来て提案をすることも多いと聞きます。本県の場合、そうした営業提案でそのまま運用するのではなく、第三者機関の「資金管理委員会」を設置し、金融機関の格付け会社の人や金融分野の大学教授をメンバーに加えるなど一定のリスク管理をしていると把握していますが、小さな市町ではこんな組織をつくるのは簡単ではありません。営業の提案を聞いて、例えば基金の運用で「高金利の定期性預金がありますよ。低リスクで高い金利があり、元本保証がありますよ。他の自治体でも運用していますよ」と提案されるとどうでしょうか。今回、市町の運用実態については総務省からの要請で県も把握しているはずですが、一般の市町の場合、借金にあたる起債は県の同意や許可制がありますが、預金についてはそうした関与がない。将来の市の財政の手足をも縛りかねない長期の為替連動変動金利などの資金運用をしていることについて、市町に対してリスクの情報公開をはじめとする「技術的な助言」をすることも必要なのではないかなどとも思うわけですが、それは検討いただくとして、では本県自体の運用についてはどうなんでしょうか。
調べますと兵庫県の基金総額は今年度末で1997億円。1%で約20億円ということですが、県の場合は仕組み預金を行っていないということです。しかし、一方でこの仕組み預金とは逆に、県債発行という借金の条件として金利が変動するデリバティブをとり入れた「仕組み債」を発行しています。金額的にも基金より30倍も大きい本県の県債残高ですから、支払う場合の高金利リスクが30倍大きいということですが、県債の総額は平成20年度末で4兆5千億円ほどということで、年1%の金利だったら約450億円、2.1%以上で金利は1000億円を超えてくる大変な金額です。金利が2%でも税収の1割以上が金利負担だけで消えてしまう。
本県の場合、県債の金利上昇リスクを多く抱えているということですが、これが財政フレームにどう影響するのか、この点について確認しなければなりません。「仕組み債」は20年末では全国1800の自治体の中で17自治体しか発行していません。そのうち7つが府県で、兵庫県はその一つ。全国で総額約4,200億円が発行されていますが、兵庫県は895億5000万円と大阪府につぐ第2位の発行額となっています。実は国でもこの仕組み債での運用についてはリスクが高いという議論があり、兵庫県の仕組み債についても「仮に契約上の上限金利が1年間適用された場合、うち595億5000万円に対して38億円の金利負担に計算上なるリスクがある」と望月達史総務省大臣官房審議官が国会で答弁しています。預金の反対の借金ですから、金利は低ければ低いほどいいのですが、兵庫県の実際の運用については、私が調べたところ、昨年末の段階では仕組み債全体の金利は通常の加重平均利率で1,477%の実績ということなので、固定金利より少し得をしているのではと思います。現状では安心しました。ただ、本県の場合はこの「仕組み債」とは別に、(5年、10年物)の変動利付債も2287億9200万円発行しています。仕組み債とあわせて3183億円。日本の全自治体の中で2位大阪府の1650億円の2倍の変動金利リスクを抱えているということであります。日本の財政赤字の拡大から、日本の国債の金利も上昇傾向にあります。発行時に予測できない金利のリスクについて財政フレームではそのリスク等をどのようにとっているのか?確認させて下さい。
(答弁)大谷 資金公債室長
今年度2月補正後の全会計起債実残高約4兆6000億円のうち、仕組債残高は891億円約1.9%で、資金管理委員会の委員からは、この程度のシェアであれば大きなリスクではないと助言を得ている。変動利付債残高は、短期金利で借入している公共用地特会分451億円を除くと1,831億円、シェアとしては約4%であり、大部分の起債を固定金利で借入している。
同じ年限の固定金利に偏り過ぎることも一種のリスクであり、また、一般的に「名目成長率と長期金利の間には相関関係がある」と言われており、金利上昇期には県税収入も増収傾向にあると考えられるため、変動利付債の金利上昇リスクは一定程度、カバーされているものと考えられる。
さらに、★公債費の予算においては、若干の金利上昇に備えて予算計上しており、平成20年度予算では金利上昇局面に積算したこともあって、利息分の減額補正額は全会計で約30億円、一般会計で約26億円となった。
具体的には、理論上、満期到来時には変動金利と固定金利の総支払い利息が均衡する前提で金利が決まっていることから、変動利付債についても、積算上は固定金利に準じた金利を設定して予算計上しており、変動利付債や仕組債に限らず、多少の金利上昇には対応できるものと考えており、これが財政フレームの試算のベースにもなっている。
今後、臨時財政対策債など、地方債の大量発行が予想される中、県債の円滑な消化を図るためには多様な形態での発行が求められてくることから、変動利付債については引き続き発行していく必要があると考えており、全体でのシェアやバランスにも配慮しながら適切な公債管理に努めてまいりたい。
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民主党大久保勉参議院議員による参院財政金融委員会質問(09.2.12)「地方公共団体のデリバティブ」
兵庫県の仕組み債、変動利付け債導入状況(総務省提出資料より本県分のみ抜粋)
プロが直言「仕組み預金に手を出すな」小口幸伸さん(日経WagaMaga)
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(5)国の施策変更が財政フレームに与える影響について |
最後に、今議会の本会議質問の中で、関西空港の護岸工事にかかる出資金について、国が示した金額を大阪府が一時拒否したことについて質問がありました。これは地方財政法に基づき、国の直轄事業の地方も負担するという直轄負担金制度に基づくもので法に規定があります。本来は法律を改正すべきもので、大阪府知事の判断は超法規的な措置で驚きましたが、井戸知事も大阪府が出資したことを確認したら兵庫も出資するとして共同戦線をはり、この直轄負担金制度そのものについても廃止すべきであると答弁されています。知事会としても国に廃止を求めるとしています。ここではこれが廃止されたときに投資事業のフレームがどうなるのかについて伺いたいと思います。
この財政フレームの中でも、投資事業の国庫補助事業の中にこの直轄負担金が入っていますが、平成21年度は総額約270億円ということです。一方で、地方財政法では「県が行う建設事業で、その市町村を利するものについては、その受益の限度において経費の一部を負担させること」が規定されております。また市町村に負担させる前に、「まず市町村の意見を聞き、都道府県議会の議決を経て、これを定める」とされています。
今議会にも「県が行う建設事業について市町の負担すべき額を定める件」として明石市内の鉄道高架事業について、その事業費の100分の15を明石市に求める議案が提出されていますが、国には負担金を廃止しろという一方で、県事業については市町に負担を求めていることについては、どう考えているのかという点も疑問に感じるわけです。実は報道や知事会の話の中でも都道府県負担については聞きますが、市町村についてはあまり聞こえてこない。私は市会議員をしておりましたが、県事業の負担について県と市町の事前協議の場が設定されているとは聞いたことがありませんし、市町の予算編成前に事業と金額について県の要求額を市町の予算に組み込むだけという話でした。もし市町が財政上の問題で負担金を出せないということになるとその事業は実施されないということを聞いたことがあります。
今年度予算の県が国の直轄事業で負担する金額と市町からもらう負担金をざっと拾ってみたころ、支払いが約270億円、受け取りが約160億円となっています。国が自らの事業の負担を都道府県に求めるのと、都道府県が市町村に負担を求めるというのは、その手続きに「事前に意見を聞く」ことや県議会の関与、維持管理経費の負担などの違いがあるものの、基本的に自治体を受益者とする考え方は同じであります。県が決めた負担金額に不服があるときは市町村は総務大臣に異議を申し出ることができるこという制度もありますが、都道府県の施策に対して、市町村が個別に国へ異議を申し立てるということはそう簡単なことではありません。自治体への受益者負担という考えが分権の時代にそぐわないと考え、国の負担金制度に問題があるとするなら市町に対してもこの法律を使わず市町に負担を求めないということが筋であると思います。本県の財政状況では国に対する負担をそのままにしたまま、それを先行して実施するのは厳しいと思いますが、理論的にはそういうことです。国土交通大臣は橋下知事の陳情を受け、何らかの見直しをするとの発言もされていますが、国の直轄負担金制度が廃止されると現在の投資事業の枠がかわるほか、見かけ上の差し引きで県の財源は増加するのだと思います。一方で、国の補助事業や地方交付税もあわせて減ることにはなると思いますが、地方は住民により近く国以上に大型投資に対するチェックが働くので、トータルでプラスになるはずです。国への直轄負担金制度が廃止されれば、県が市町に課している負担金も当然なくなると思いますが、財政フレームへの影響がどうなるのかを含めて確認したいと思います。
(答弁)牧 企画県民部長
財政フレームにおいて、補助事業には、国庫補助事業費と国直轄事業負担金の合計額を計上しており、市町からの負担金については事業費の内数になっている。
仮に、国直轄事業負担金が廃止された場合、県支出は減少するが、その分、地方交付税や地方債などの国の財源措置もなくなることが想定され、必ずしも収支改善につながるものではないと考える。
一方、県事業に対する市町負担金についても、地方財政措置との兼ね合いがあり、市町にとっては、県における国直轄事業負担金の場合と同様である。
国直轄事業負担金と県事業に対する市町負担金については、広域的な事業を実施する場合に各地域の負担をどのように考えるかという点で、同様の関係であるので、一体的に議論すべき問題ではあると考えるが、財政的な観点では、国と地方との税源配分の問題、地方財政措置の問題と一体的に考えなければならない問題だと考える。
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国直轄事業の県負担金・県営事業の市町負担金の単純比較(平成21年度当初予算)
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