議員報酬について


報酬審議会の早期招集による報酬額の適正化と
給与条例の改正による期末手当の透明性確保が課題
最終更新 2005.2.8
2004年6月16日、姫路市議会総務経済委員会において「姫路市特別職報酬等審議会」を早期に召集するよう、正式に行政当局に対して申し入れました(下記委員会記録参照)。この趣旨は、議員等特別職の報酬の引き下げについて、納税者等の給与状況に準じた引き下げを含めた改定を行う必要があるということです。

私の調査でも、特別職の報酬水準については平成10年以来市民審査を受けていないことがわかっています。私のHP掲示板でも特別職の給与改定については強い引き下げの意見がありました。現下の経済状況から、審議会が開会されれば、議員報酬は引き下げの勧告が出ると思います。議員自らも痛みを率先して、改革のためにその他のあらゆる部分に手をつけていくことが、今後の租税負担の拡大や行革等の理解を得るためにも必要ではないかと思います。

ただし、私の意見としては、市長の給料はその責任の重さと比較して、高いとは思いません。そういったことを含めて市民審査をする必要があると思います。市長の退職金の引き下げについても唯一人委員会採決で反対しました。

背景

議員や市長など特定の特別職の報酬等は条例の制定により、自分で自分の給与等を決定することが可能であることから、お手盛りをさけるために、審議会のような第三者の中立機関で審査されることになっています(総務省の指導で制度として整備)。

これに基づき開催された1996(平成8)年の審議会答申には「報酬額を2年ごとに見直す」よう記されていますが、実際には、1998(平成10)年以降、見直しは行われていません(その理由についても下記の記録で私が言及)。
市議会総務経済委員会記録(2004年6月16日1頁後半〜2頁前半)
記録は要点筆記のため、簡潔にまとめられていますが、相当強く主張しました。その後、進展がないのは残念ですが、議会内に審議会の招集に反対の声があるということも聞きます。

議会として取り組んできた議員定数削減の比率が、一般職が適用を受ける人事院勧告の給料引き下げ基準勧告よりやや多いということも理解していますが、議員や市長など特別職の報酬だけが一度も下がっていないことを含めて、一度審査していただくため、市長はできるかぎり早期に「報酬審議会」を招集すべきであると考えます。
姫路市特別職報酬等審議答申(1998年1月12日)
この答申を受け、翌99年4月から答申通りの新しい報酬・給与額に改定されました。これ以降、報酬審議会は招集されず、報酬額の改定もありません。

議員報酬・政務調査費・特別職報酬審審査内容一覧(2003年度)

議員報酬等について、姫路市と他の中核市のデータを比較。「報酬(給与所得。事業所得ではありません)が高く、政務調査費(議員政策経費)が低い」ことがわかる。
所得と議員活動の経費(政務調査費)を完全に区分できるようにならなければ、政治の世界のどんぶり勘定体質やあっせん収賄・利得等の根本的な解決にはならない。選挙や人件費等にかかる多額の費用をどこかで回収しようとするからである。

議員報酬・政務調査費・費用弁償等一覧[中核市]
上記データの原資料。費用弁償額も記載されている。地方自治法の改正によって、費用弁償の支給が法的にも認められるようになったとはいえ、廃止の傾向にある。交通費の実費支給を導入するとともに、予算を政務調査費に一元化する等、議会の調査機能拡充の予算に振り替えるべきだと考える。

議員共済[リンク] ※法定福利
法定の議員年金制度。任意加入ではなく、法律によって加入が義務づけられている。ただし、県会・市会・町会の同じ議会に3期12年以上在職した議員しか年金を受け取ることはできない。町会2期→市会2期→県会2期と在職しても、どこからも年金を受け取ることはできない(掛金の一部が戻ってくる)。
受給者の増加や合併に伴う年金特例、市の数の増加により、給付水準の引き下げや掛金の増額で対応している。国会議員の年金制度は、公費負担が約7割ということで批判を受けているが、地方議員共済の場合、負担比率は「議員掛金:雇用主負担=13:10.5」となっているため、需給バランス的に他の年金制度より悪化するのは当然である。合併や定数削減によって現役議員数は更に減少し、受給者数は増加することは確実。年金制度として成り立つわけがない。公費の追加負担という時代でもない。現行制度のままでは受給者過多によって破綻するだろう。若手議員の中には、廃止論者も多い(私も)。

積立金取り崩しでの対応は早晩限界を向かえ、若い世代が需給できなくなる可能性もある。
毎日新聞2004年5月4日記事

なお、姫路市議会の場合、任意の互助会や給付等の福利厚生制度はない。

■期末手当支給に関する「条例・規則明記」問題[下記関係法規参照]
上記委員会記録でも主張している通り、条例では議員の期末手当は3ヶ月支給となっている。ところが、「規定にかかわらず市長が必要と認めたときは、予算の範囲内において期末手当又は勤勉手当の額を増額して支給することができる」という条文を準用して、一般職の常勤職員と同様に勤勉手当分を支給している。

一般職が他の営利企業等との兼業が禁止されている一方、兼業が認められている非常勤特別職の議員に対して同額が支給されるままでいいのか。地方議員の専業と兼業のあり方を含めて、議論する必要がある。

※議員に勤勉手当を支給する法的根拠はない。旧自治省時代から通達あり(常勤の特別職も含む)。
関係法規

○地方自治法
第203条 普通地方公共団体は、その議会の議員、委員会の委員、非常勤の監査委員その他の委員、自治紛争処理委員、審査会、審議会及び調査会等の委員その他の構成員、専門委員、投票管理者、開票管理者、選挙長、投票立会人、開票立会人及び選挙立会人その他普通地方公共団体の非常勤の職員(再任用短時間勤務職員を除く。)に対し、報酬を支給しなければならない。

2 前項の職員の中議会の議員以外の者に対する報酬は、その勤務日数に応じてこれを支給する。但し、条例で特別の定をした場合は、この限りでない。

3 第1項の者は、職務を行うため要する費用の弁償を受けることができる[費用弁償合法規定]。

4 普通地方公共団体は、条例で、その議会の議員に対し、期末手当を支給することができる

5 報酬、費用弁償及び期末手当の額並びにその支給方法は、条例でこれを定めなければならない。

○姫路市議会の議員の報酬等に関する条例
(報酬)
第1条 議会の議長、副議長及び議員の報酬は、次のとおりとする。
議長 月額 863,000円
副議長 月額 779,000円
議員 月額 704,000円

第2条 議長、副議長及び議員の報酬は、その職についた当月分から任期満了、辞職、失職、除名、死亡又は議会の解散等によりその職を離れたその当月分までを支給する。ただし、いかなる場合においても重複して報酬を支給しない。[※日割りのない月額報酬制となっています]

(費用弁償)
第3条 議長、副議長及び議員が公務のため市外に旅行したときは、その旅行について費用弁償として旅費を支給する。
2 前項に規定する旅費の額及び支給方法については、市長の例による。
3 議長、副議長及び議員が議会の会議、常任委員会、議会運営委員会又は特別委員会に出席したときは、費用弁償として、次の各号に掲げる区分に応じて当該各号に定める額を支給する。ただし、公用の交通用具(これに相当するものを含む。)を利用して出席したときは、日額4,000円を支給する。[※公用車を使っても支給されます]

(1) 議事堂を中心として半径7キロメートル未満の区域内に居住する議長、副議長又は議員 日額6,500円
(2) 前号に定める区域以外の区域内に居住する議長、副議長又は議員 日額7,500円

(期末手当)
第4条 議長、副議長及び議員で5月又は11月の末日に在職するものに、期末手当を支給する。これらの日以前1月以内に、任期が満了し、辞職し、失職し、除名され、死亡し、又は議会の解散等により任期が終了したこれらの者(当該これらの日においてこの項前段の規定の適用を受ける者を除く。)についても、同様とする。
[※民間の場合、支給日在職者に限定して支給する例だと記憶しています。]
2 期末手当の額については、市長が定めるところにより姫路市職員給与条例第15条第2項及び第4項並びに第15条の5の規定を準用する

(報酬及び期末手当の支給方法)
第5条 第2条及び前条に定めるほか、報酬及び期末手当の支給については、一般職の職員について適用される給与に関する規定(姫路市職員給与条例第15条の2及び第15条の3の規定を除く。)の例による。

(規則への委任)
第6条 この条例の実施に関し必要な事項は、規則で定める。
(※規則は定められていません)


上記条例で準用するとされる「姫路市職員給与条例第15条」抜粋
2 期末手当の額は、期末手当基礎額に、5月に在職する職員に支給する場合においては100分の140、11月に在職する職員に支給する場合においては100分の160を乗じて得た額に、基準日以前6箇月以内の期間におけるその者の在職期間の次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める割合を乗じて得た額とする。[※満額支給の場合、1.4+1.6で3ヶ月の支給となるはずです]

(1) 6箇月 100分の100
(2) 5箇月以上6箇月未満 100分の80
(3) 3箇月以上5箇月未満 100分の60
(4) 3箇月未満 100分の30

4 第2項の期末手当基礎額は、それぞれその基準日現在(退職し、若しくは失職し、又は死亡した職員にあっては、退職し、又は死亡した日現在)において職員が受けるべき給料及び扶養手当の月額並びにこれらに対する調整手当の月額の合計額とする。

(期末手当及び勤勉手当の特例)
第15条の5 第15条及び前条第1項から第4項までの規定にかかわらず市長が必要と認めたときは、予算の範囲内において期末手当又は勤勉手当の額を増額して支給することができる。
[※この条文を根拠に実質的に勤勉手当分を増額支給しています。ただし、この条文を使っているのは、議員だけではありません。]
■期末手当の傾斜配分
上記の条例だけを普通に読めば、議員には、5月は1.4ヶ月、11月は1.6ヶ月の期末手当が支給されることになるが、市長が必要と認めて、予算の範囲で期末手当を増額し、実質的に勤勉手当分も支給している。勤勉手当は夏冬0.7ヶ月ずつの計1.4ヶ月なので、年間の期末手当の合計額は4.4ヶ月となるはずである。

しかし、更に増額されて支給されていることがわかった。それが”傾斜配分”と呼ばれる制度である。議員や市長らは、規定のある局長級に準じて20%増額して支給している。

つまり、5月の場合、(1.4+0.7[勤勉手当分]=)2.1×1.2[傾斜配分20%]で2.52ヶ月となり、11月は(1.6+0.7勤勉扱い=)2.3×1.2[傾斜配分20%]で 2.76ヶ月となる。結局のところ、年間5.28月の期末手当を受給していることになる。

無論、議員や市長の期末手当については支給日にマスコミによって個別の支給金額が報道されるので、市民の厳しい意見を聞くことも多いし、増額分を含むものが公表されるので、情報が開示されていないわけではない。ただ、金額が公開されればいいというものではなく、条例で計算できるようにしておくことが最低限必要ではないか。個別の金額が公表されない場合、この条例では、チェックが働かない。[※重要]
期末手当の支給月数を条例で規定する事例
○堺市条例

(議会議員の期末手当)
第8条 議会議員で6月1日及び12月1日(以下この条においてこれらの日を「基準日」という。)にそれぞれ在職するものに対して、期末手当を支給する。
2 前項の期末手当の額は、それぞれその基準日現在における報酬の月額にその100分の20を加算した額に、6月に支給する場合においては100分の225、12月に支給する場合においては100分の215を乗じて得た額に、基準日以前6か月以内の期間における次の各号に掲げる在職期間の区分に応じ、当該各号に定める割合を乗じて得た額とする。

(1) 6か月 100分の100
(2) 5か月以上6か月未満 100分の80
(3) 3か月以上5か月未満 100分の60
(4) 3か月未満 100分の30

※支給月数は1.2×2.25+1.2×2.15=5.28ヶ月となり、姫路市と同じ。