「合併特例区」について懸念を表明する(未定稿)

−市町村の合併の特例等に関する法律から−

「原則としては、1市4町で地域審議会を設置する方向で考えていきたい。」という答弁を信じて交渉の経緯を見守ってきましたが、合併特例区の制度や内容を詳しく知らないまま、導入を前提にしたような交渉を行うことは危険です。

法律と条文解釈型の国会審議、解釈もあわせて記載し、新たな法律の解釈についても、国会答弁を通してその具体的事例について確認したいと思います。


第三 合併特例区

一 合併特例区

合併市町村において市町村の合併後の一定期間、合併関係市町村の区域であった地域の住民の意見を反映しつつその地域を単位として一定の事務を処理することにより、当該事務の効果的な処理又は当該地域の住民の生活の利便性の向上等が図られ、もって合併市町村の一体性の円滑な確立に資すると認めるときは、合併関係市町村の協議により、期間を定めて、合併市町村の区域の全部又は一部の区域に、一又は二以上の合併関係市町村の区域であった区域をその区域として、合併特例区を設けることができるものとし、@合併特例区は、特別地方公共団体とするものとすること。(第二十六条及び第二十七条関係)

二 合併特例区の設置

  1. 合併関係市町村は、合併特例区を設けようとするときは、協議により規約を定め@都道府県知事の認可を受けなければならないものとすること。(第二十八条関係)
  2. 合併特例区は、市町村の合併が行われた日に成立するものとすること。(第二十八条第四項関係)
  3. 合併特例区が成立する際A現に合併関係市町村が有する権利のうち、合併特例区の運営に必要なものとして当該合併関係市町村の協議により定めるものは、当該合併特例区の成立の時において当該合併特例区が承継するものとすることができるものとすること。(第二十九条関係)
@特別地方公共団体は自治政策上、特別な目的を持った団体のことで、世田谷区など東京都の特別区や兵庫県競馬組合などの一部事務組合等と同じく「法人格」を有し、固有財産の所有などで権利・義務の主体となることができます。
A安富町、香寺町と合意した「地域審議会」は、合併特例区とは異なり、県知事の認可は必要ではありません。
B合併特例区には法人格がありますので、権利の継承が可能です。


合併特例区に関する国会質疑等について
[第159国会-参議院総務委員会-17号 平成16年05月18日]
[第159国会-衆議院総務委員会-14号 平成16年04月20日]
上記議事録等から抜粋
○高嶋良充 委員(民主党参議院議員)
○岩崎忠夫 委員(自民党衆議院議員/元自治省行政課長)
○松崎公昭 委員(民主党衆議院議員)
○桝屋敬悟 委員(公明党衆議院議員)
○日笠勝之 委員(公明党参議院議員)


合併特例区の必要性について

○高嶋良充君
 合併特例区の関係についてまずお聞きをいたしますけれども、市町村合併の後に市町村単位に合併特例区というのを設置が可能だと、こういうことなんですが、私は、広域連合や町村会が提唱されています連合市町村なら理解できるんですけれども、合併をした後になおこのような合併特例区というのを設置をしなければならないという、その必要性が理解ができないんですが。かえってこの新自治体の一体性というものを損なうことになりはしないかというふうに思うんですが、その点についてはいかがでしょうか。

○国務大臣(麻生太郎君)
 この問題は、高嶋先生、元々はむしろ地方の方からの要望がかなり多かった。その理由は、合併をすると旧来の、麻生町だ高嶋町だという名前が、村がなくなるというのがいかがなものかという希望が一点。
 それからもう一つは、町で持っております例えば公民館等々の財産というものを、いわゆる、それを中心にコミュニティーが一個でき上がっておりますので、そういったものを含めてきちんとしてもらわぬと、何となく、あの市に全部ざあっと合併されて、名前は変わるわ何は変わるわ、元々のおれたちの字というか、字名、地名、町名、村名がなくなるというのが、ちょっとどうしてもよろしゅうないという、特に御年配の方々の意見が多かったように思いますけれども、そういったことでもありましたので、じゃ、一定期間ということで、少なくとも一定期間の間、そういった所有物、建築物、構造物もありますので、そういったものがありますので、五年以内ということで、特別に地方公共団体としてこういったものを、法人格というものを有するものを設置、ただし五年ですよということを一応申し上げているところであります。
 独立した団体に設けて事務の処理をゆだねる方が適当であるというケースもあることもまた事実です、新しく合併された市側にとっちゃ全然知らない財産がそこにあるわけですから。
 そういった意味で、このような例は、いずれにいたしましても市町村の合併に伴いまして、いわゆるソフトランディングというのかな、ゆっくりうまく着地できるようなものにしたいというのが本来の目的でありまして、そういった意味では妙にそこのところだけが変な形で残るということよりは、うまくソフトランディングさせるためにこういったものをという要望に基づいて作ったという背景でございます。


○岩崎忠夫委員(自民党/元自治省行政課長)
 次に、合併特例区の運用の指導についてお尋ねしたいと思います。
 合併特例区は、法人格を有し、合併特例区協議会のほか、特別職の区長が置かれます。また、合併特例区の予算、職員、財産を持つことになります。大都市であります指定都市の行政区でありましても、膨大な事務を処理しておりますが、法人格はなく、したがって、議会や特別職の区長や予算、職員を有しておりません。議会も置かない団体になぜ法人格が要るのでございましょうか。また、法人格を持つ特別地方団体である合併特例区であって、なお、ともに市町村長任命による区長と合併特例区協議会というのは、制度論としてもいかにも変則的なものであります。
 私は、今回の改正が市町村合併促進のため過渡的に必要とされるものであると理解をいたしましても、合併自体、地方行革の推進に資するものでなければならないことを考えますれば、法律の規定は余りにも重い陣立てではないかと思われます。また、合併特例区も地方自治組織の一つと考えれば、組織は一律に規定するのではなく、もう少し弾力的かつ簡素なものとする必要があろうかと思います。
 そこで、今回の改正が地方行革の推進に反しないようどのように運用を指導していくのか、麻生総務大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

○麻生国務大臣
 新しいのに当たって陣立てが、少々構えが大き過ぎないかという御指摘なんだと思います。 新しい、いわゆる特別地方公共団体というものをつくるということでもありますので、設置手続やらその機能等々いろいろございますけれども、そういったものの制度設計をするに当たっては、これは極めて小さな、権限は限ったものにしておかないかぬのは当然のことだと思っています。
 例えば、課税権とか地方債の発行は絶対だめですよとか、また、職員は市町村合併をするときに当たってその職員と兼務するとか、別じゃないですよ、兼務するんですよとか、いろいろな形でやっておりますし、合併特例区協議会のいわゆる構成員というのは原則は報酬なし、無報酬ということでしていただかぬと、そのまた給料なんという話もだめですというお話を申し上げております。

○松崎公昭委員(民主党)
今回、地域自治区というのが、どうもそのようなものができてきたんだろうとは思っているんですが、大変わかりづらいですね。合併特例区は、どっちかというと合併される方がなかなか難しいので、ある意味ではそれをなだめるために、名前を使っていいよとか首長が指名して区長をつくるとかいろいろやっていますけれども、そこにまた、地域自治区も置けるとか、あるいは、五年たった後に合併特例区が切れた後は地域自治区にも変えられる。特例区の方は、法的なものがあって財産も持てる。しかし、地域自治区はそうじゃない。これは勉強していてもなかなかわかりづらい。

 

三 合併特例区の権能

合併特例区は、@合併関係市町村において処理されていた事務であって A市町村の合併後の一定期間当該合併関係市町村の区域であった地域を単位として処理することが当該事務の効果的な処理に資するもの及び B合併関係市町村の区域であった地域の住民の生活の利便性の向上等のため市町村の合併後の一定期間当該合併特例区が処理することが特に必要と認められる事務のうち、規約で定める事務を処理するものとすること。(第三十条関係)
@ABの条件解釈は、如何様にでも解釈することか可能です。これまでの合併では存在しなかった「合併特例区」が処理することが特に必要と認められる事務とは何でしょう。

四 合併特例区の規約

合併特例区の規約には、次に掲げる事項につき規定を設けなければならないものとすること。(第三十一条第一項関係)
 イ 合併特例区の名称
 ロ 合併特例区の区域
 ハ @合併特例区の設置期間
 ニ A合併特例区の処理する事務
 ホ 公の施設の設置及び管理を行う場合にあっては、当該公の施設の名称及び所在地
 ヘ 合併特例区の事務所の位置
 ト B合併特例区の長の任期
 チ 合併特例区協議会の構成員の合併市町村の長による選任及び解任の方法並びに任期
 リ 合併特例区協議会の会長及び副会長の選任及び解任の方法
 ヌ 合併特例区協議会の組織及び運営に関する事項
ハの設置期間は、@当該合併特例区がニの事務を処理することが適当と認められる期間を勘案して定めるものとすること。ただし、当該設置期間は、五年を超えることができないものとすること。(第三十一条第二項関係)
合併特例区の規約の変更は、合併市町村と合併特例区との協議によって定め、合併市町村にあっては、議会の議決を経なければならないものとし、合併特例区にあっては、合併特例区協議会の同意を得なければならないものとし、1のイ、ヘ又はリに掲げる事項その他政令で定める事項のみに係る合併特例区の規約の変更を除き、都道府県知事の認可を受けなければならないものとすること。(第三十二条関係)
@BCDEF特例区の設置期間は最長5年。その間、特例区長や特例区協議会が存在することになる。一度定めた規約の改正は市議会の議決だけでなく、特例区の同意と県知事の認可も必要です。

A総務省HPには、合併特例区が処理する事務の例として「地域の公の施設の管理(集会所、コミュニティセンター等)、地域振興イベント、コミュニティバスの運行、地域に根ざした財産の管理(里山、ブナ林等)」が記載されています。姫路地域の合併協議会では、各町の旧町役場を当面の間 地域事務所として活用することに合意していますし、安富町のネスパル安富の管理や森林組合への補助、香寺町のコミュニティバスの管理運行など、上記に記載されたような事務の調整や市議会での審議、事務事業の調整内容の報告を含めて「合併後の一定期間 当該合併特例区が処理することが特に必要と認められる事務」はありませんでした。


[平成16 年6 月10 日(木) 第9回天竜川・浜名湖地域合併協議会 「議事要点」抜粋]より
(委員=高林一文浜北市議会議長)
飛竜まつりやコミュニティバスは、合併特例区でなければできないのか。新市の一部が合併特例区になった場合のデメリットについても聞きたい。

(会長=北脇保之浜松市長[総務省出身])※姫路市議会視察訪問済み
飛竜まつり、コミュニティバスなどは一市多制度で残すと調整されており、合併特例区でなくてもできる。(中略)行政組織はどこの区域も同じ仕組みになる方がよいと思う。異なっては、対等の精神にそぐわない。特別職の区長を置くのも行政改革の観点からどうかと思う。予算編成権があるといっても固有の財源があるわけではなく、事務が煩雑になるデメリットがある


合併特例区が存在する地域と存在しない地域の公平性について
○高嶋良充君
 いろんな道具を与えて地方自治体が使い勝手をしやすいようにしてやるというのは、これは私も否定はしないんですが、ちょっと一問、前の質問に戻りますけれども、この合併市町村の一部の区域だけ合併特例区を設置をしないということも法律案を見ていたら可能だというふうに思うんですが、もし可能だとすれば、同一自治体の中で一部は合併特例区を設置をして一部は設置をしないということになると、不公平さ、公平さの観点からどのような問題が起こるのかという部分があるんですが、その点はどうでしょう。

○政府参考人(大野慎一君)
 これはサービスが、ある合併特例区を作ったところだけその住民に公民館の活用できるとか、そういうサービスが提供されると。合併特例区がないところはそもそもそういうサービスがないと。こうなれば、確かにそのサービス提供について地域的な不公平が生ずるということもあり得るわけですが、これはそういうことは想定しておりませんで、住民に対するサービスの提供はあくまでも同じでありますけれども、そのサービスの中で特定のものについては合併特例区から提供すると。だけれども、そうでないところは新しくでき上がります新市の中で対応すると。こういうふうなことを想定しておりますので、サービスの提供の仕方に差がありますけれどもサービスの提供は同じだという前提でありますので、不公平になるということはないと思います。

五 合併特例区の長

  1. 合併特例区の長は、市町村長の被選挙権を有する者のうちから、合併市町村の長が選任するものとすること。(第三十三条第一項関係)
  2. 合併特例区の長の任期は、二年以内において規約で定める期間とするものとすること。(第三十三条第二項関係)
  3. 合併特例区の長は、合併市町村の助役と兼ねることができるものとすること。(第三十三条第三項関係)
  4. 合併特例区の長は、当該合併特例区の区域を所管区域とする支所若しくは出張所又は指定都市の区の事務所若しくはその出張所の長と兼ねることができるものとすること。(第三十三条第四項関係)
  5. 合併特例区の長の職は、特別職とするものとすること。(第三十三条第七項関係)
  6. 合併特例区の長は、合併特例区を代表し、その事務を総理するものとすること。(第三十四条第一項関係)
  7. 合併特例区の長は、法令、合併市町村の条例又は合併特例区の規約に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、A合併特例区規則を制定することができるものとすること。(第三十四条第五項関係)
@合併特例区長は議会の同意人事ではなく、合併市町村の長の選任だけで任命することができる。合併の障害となる合併される旧市町村長の横滑りを想定して整備したとされている。特例区長は職務の形態から”常勤”の特別職となる。常勤職員に対しては、特別職であっても調整手当等が加算されるほか、期末・勤勉手当等を含め、一般職同様に支給される。
A合併特例区長は、規則を制定する権限を持っている(合併市町村長や特例区協議会の関与は同意不要)。公選によらない特例区長に住民の権利義務を制限する規則制定権を付与することには問題がある。



○桝屋敬悟委員(公明党)
 今回のまさに合併特例区がそうでありますけれども、十年とか五年とかという議論がありました。これも、下手をすると、なお今までの首長さんが、従前、今までどおりしばらくその場にいたいのか、そのためにどれだけ税金が使われるのか、こういう議論になるわけでありまして、この辺の兼ね合い、バランスをどうするかというのは本当に、私自身が身につまされて悩んでいる話なんでありますが、この辺のお考えを、大臣の御所見を伺いたいと思います。

○麻生国務大臣
 桝屋先生、先生の隣のところに北九州市というのがあるんですが、ここは昭和三十八年に合併したんです。五市が合併いたしまして、小倉、門司、若松、八幡、戸畑、これが全部昭和の大合併として政令都市になったときに、まさにその在任特例、各市で選挙のあれが違ったものですから、二年間の在任期間を置いて実はうまくいったという前例が、多分その二年というのは、あのとき二年だったので。当時、結構騒ぎでしたけれども、結果としてはそこそこうまくいった例だと思っています。
 ただ、これは基本的には任意であります。二年をマックス、最長にしておりますので、それをどうするかは任意で決められることになっております。

六 合併特例区協議会の設置及び構成員

  1. 合併特例区に、合併特例区協議会を置くものとすること。(第三十六条第一項関係)
  2. 合併特例区協議会の構成員は、合併特例区の区域内に住所を有する者で合併市町村の議会の議員の被選挙権を有するもののうちから、規約で定める方法により合併市町村の長が選任するものとすること。(第三十六条第二項関係)
  3. 2の方法は、合併特例区協議会の構成員の構成が、合併特例区の区域内に住所を有する者の多様な意見が適切に反映されるものとなるように配慮して定めなければならないものとすること。(第三十六条第三項関係)
  4. 合併特例区協議会の構成員の任期は、二年以内において規約で定める期間とするものとすること。(第三十六条第四項関係)
  5. 合併特例区協議会の構成員には、報酬を支給しないこととすることができるものとすること。(第三十六条第六項関係)

合併特例区協議会の構成員の選任方法について
○高嶋良充君
 一つは、合併特例区協議会、特例区ができれば協議会を作るんですけれども、この構成員の関係ですけれども、これは規約で定める方法により合併市町村長が選任をすると、こういうふうに条文にあるんですが、合併市町村長の選任では恣意的な人事が行われるということになるんではないかというふうに思うんですが、公職選挙法は適用されないと思うんですが、選挙によって行うことは可能ですか?

○政府参考人(大野慎一君)
 私どもは、何らかの形で住民の意見を聞く、その住民の投票の仕方、いろいろ工夫はあると思いますけれども、そういった結果を尊重してその新市の長が構成員を選任すると。これを仮に準公選制と言うとしますれば、そういったことも可能だろうと思っております。



○日笠勝之君(公明党)
 じゃ、合併特例区についてまた何点かお伺いしたいと思います。
 この合併特例区の協議会の構成員、これは議員も、現職の議員も可能なんでしょうか、不可能なんでしょうか

○政府参考人(大野慎一君)
 合併特例区の構成員、協議会の構成員の要件は、合併特例区の区の住民であるということと被選挙権を有する者ということでありますので、そういうことが要件になっております。

○日笠勝之君 議員でもオーケーということですね。はい。そうしますと、この合併特例区は議員でもこの構成員になれると、元議員でもなれるわけですが。
 広島県の福山市が隣の新市町という町と合併しまして、もうあなた方はもうこれで辞任ですよと、辞職してくださいと。その代わり、行政諮問委員として今までと同じ二十六万円出しましょうと、こういうことが実際ありましたですね。ということは、これ、報酬しないことができるというんですけれども、裏を返せば、どういうんですか、報酬を例外的に出しましょうと。だから、合併してあなたの場合は議員の身分なくなるけれども、行政諮問委員としていろいろ市の方へ御意見や御要望、住民のを吸い上げて提言してくださいと。もっとも、この新市町は提言は一だった、一件だけだったそうでございますが。そういう充て職的に何か使われるような気もすると。
 というのは、先ほどちょっとお話がありましたけれども、巨大議会が増えていますね、百四十名だとか百三十名だとか。それにもう、なかなか住民のウオッチングされて、オンブズマンもうるさいし、もうとてもじゃないがもう巨大議会は無理だねと、だったらここへ行ってちょうだいと、こういうふうな隠れみのになるようなこともちょっと心配するんですが、そういうことは全くない制度でしょうか。

○政府参考人(大野慎一君)
 これは制度を作る場合に、これをどのように活用するかということに現場の知恵がいろいろあり得るとは思いますけれども、私どもが考えております合併特例区の協議会の権能というのは、当面五年以内でということでありますけれども、従来の町村単位で引き続きやった方がいいことをやっていただくと。そのために一定の予算についての同意権とかあるいは意見具申権を持つということで、確かにいささか従来の議事機関に似たような面も持つことは持つわけでございますけれども、あくまでも地域の一体的なまとまりを当面の間有するための仕組みでございまして、これを悪用するということは、究極的には住民の批判に耐え得るかどうかということになるわけでございます。

○日笠勝之君
 総務省の方は性善説の方が多いからそういうふうになるんでしょう。具体的個別にいくとなかなかそうはいかないから、住民が解散請求の住民投票を迫ったりするわけでしょう。
 そういう意味では、これは地域自治区と合併特例区は、確かに住民自治の強化だとか住民のニーズを吸い上げて民主的な手続でそれを実現していくとか、それは分かりますよ。しかし、これ、性悪説に立てば、こんないい話はないというふうに考える人も出てくると思いますね。ワンマン首長で、よし、これは地域自治区はこれはもう条例でできるし、法律も担保されているんだからこれをどんどん作ろうと、我がこの地域へ、村なら村、町なら町へと。その長は、これは公務員でしょうから、構成員は全部自分の後援会のメンバー全部入れちゃえと、後援会。そうすると、この地域自治区がそのワンマン首長の後援会に全部なっちゃうと。自分の選挙は当然ながら、県会もあれば衆議院選挙もあるし参議院選挙もある、全部取り仕切ってあげますよと、全部うちは後援会の方が構成員になっていますからと、こういうふうなことだってできないことはないですよね。後援会の人は駄目だと書いてないんですから。独占化ですよ、これ。ますますワンマン化が進むということにもなりかねないなということを心配しているわけですよ。
 だから、大野さんみたいに性善説に立てば、これで地域分権、さらに地域のニーズが云々でしょうが、私が言いますと、性悪説に立てばこれほどファッショ化、独裁化になるような地域になる可能性もあるという、裏腹ですよね、陰があれば陽があるみたいに。そういうふうなことは衆議院でも若干議論が出たそうですが、それを何か阻止する、チェックするようなことは何かあるんですか、できるんですか。

○政府参考人(大野慎一君)
 これはすべてそういう形でやるかどうか、これ、一に市町村長さんの政治責任だという法律の組立てになっているわけでございまして、法律の前提は、先ほど申し上げておりますように住民との協働の仕組みを作る、あるいは地域のまとまりをしばらくの間、例えば合併特例区の場合ですと残すということのために作る組織でありまして、繰り返しになりますけれども、地方自治ということを真剣に考えれば、私はそのような活用の在り方というのは考えられないと思っております。

○日笠勝之君
 まあ出てきた、そういう例が出てきたときにはきちっとまた議論しましょうと、こういうことになるかもしれませんね。
 それからもう一つ、地域によっては、地域といいましょうかエリアによれば、地域自治区もあります、合併特例区もあります、これは五年以内ですけれどもね。それから、もっと下部組織といいましょうか、町内会もありますと、連合町内会もありますと。場合によっては特別地方公共団体型の財産区もありますと、財産区。何か地方の組織がもう多重、多層的になって、かえって、スリム化、効率化ということを言われているこの時代にあって反対方向に行くんじゃないかと、こういう心配な向きもありますね。それに対してはどういうお答えですか。

○政府参考人(大野慎一君)
 これは、私どもはいろんな選択する選択肢を法案で用意をしたつもりでございまして、合併協議の中で、あるいは新しい市の方でどういった仕組みを活用していくのかを選んでいただくのが一番いいわけでして、当然その場合に、無駄なことをやるということは選択肢には入らない。当然、スリム化とか行政の簡素化ということを考えながら、自分の地域には当面何がふさわしいのかという判断をなされるものと思っております。

○日笠勝之君
 そこで、この地域自治区も合併特例区も、議会のチェック機能というのはどこで働くんですか。条例は、設置するときにはそれは確かに議会の過半数がなければ駄目でしょうが、構成員を選ぶのは、議会はノータッチですよね、たしか。市町村長が選任するわけです。それから、合併特例区の方も、その議会がチェックするというところがあるんですか。要は、議会はこの地域自治区だとか合併特例区についてどういう関与をするんですか。

○政府参考人(大野慎一君)
 合併特例区の場合でありましても、特別地方公共団体ということでありますけれども、例えば具体的には長もそうですし、議会もそうですけれども、合併特例区の予算などにつきましては長の承認が必要だというふうなことになっているわけでございますし、それから監査につきましても、合併特例区の事務について監査委員による監査が必要だというふうになっているわけであります。

○日笠勝之君
 いやいや、人の部分ですよ。長であるとか構成員のチェック、議会の許可とか承認だとか報告だとか、こういうチェックはどこかで働くんですかとお聞きしているんです。

○政府参考人(大野慎一君)
 人の選任につきましては、基本的に長が選任をするということにしているわけです。ただ、その場合の選任の仕方につきまして様々な工夫はあり得るわけでございますけれども、ただ、これは公選ではないと。公選ではないということだけがはっきりしておりまして、住民の方の意見を聞いて工夫するとか、そういったことは可能でございます。

○日笠勝之君
 人員構成も何かオーケーと言っておられましたね。議会の承認も場合によっては取り付けられるような条例なり、何ですか、議会の中の規約、協議でもいいということですか?

○政府参考人(大野慎一君)
 その議会が、例えば三役の場合にあるわけでございますけれども、助役とか収入役の場合の同意議決でございますね、そういった工夫は可能かと思います。

○日笠勝之君
 これは、私どもいただいた資料で見ると、全然そういうことは、議会のチェックはノーチェックみたいな資料ですので、しっかり、下ろすときには各市町村に、議会の同意が必要、議会の同意を得てもいいとか、準公選でもいいんだとか、そういうことをきちっと通達というんですか要項で出さないとと思いますが、それはそういうふうにされますね。

○政府参考人(大野慎一君)
 今の合併特例区の協議会の構成員の選任の仕方について、私どもの考え方は、できるだけ合併協議の中で決めるとか、そういう、規約にゆだねるというふうなことにしておりますので、そこ(規約)の中で具体的な選任方法についても決めていただければいいということでございます。

解釈:決まっているのは、公選で選ばれないことだけ。議会の同意人事にすることや「何らかの形(住民投票含む)で住民の意見を聞くなどした上で、結果を尊重して構成員を選任する」準公選制も規約で定めれば可能ということです。

合併特例区協議会の構成員の報酬について

○高嶋良充君
 この構成員になられる方、まあ市町村長が選任をされても、あるいは準公選制で選挙で選ばれた人になる、どちらにしても報酬はどうなるんだと、こういう問題があるんですが、第二十七次の地制調の答申では無報酬だと、こういうふうに答申はされていたわけですけれども、法律案で出てきたのは、構成員には「報酬を支給しないこととすることができる。」と、こういうふうに法律の文案はなっているんですね。 ということは、無報酬ではなしに前提は報酬を支払うんだと、だけれども報酬を支払わなくてもいいですよと、こういう法律文ですね。だから、前提は無報酬ではなしに報酬を支払うと、こういうことになっているんですけれども、基本的にはやっぱり報酬を支給をするということを想定をされておられるんだろうというふうに思いますが、そういうことなのかということと、報酬を支給する場合はどのような基準を想定されているんでしょう

○政府参考人(大野慎一君)
 私どもは、この地域協議会の構成員につきましては、やはり地域の問題を自分たちのこととして考えていくという方々になっていただくということを想定しておりまして、その意味では報酬を得ないでボランティア的にやっていただくということがいいのではないかと、こう思っておりまして、原則として報酬は支給すべきではないと。

 ただ、法律の書き方として、これ既存の規定の書きぶりがあるものですから、あのような支給しないことができるというふうに書いているわけですけれども、私どもと、気持ちとすれば、事柄としてこれはやはりボランティアでやっていただくというのが筋だと思いますので、原則として報酬は支給すべきじゃないと、こう思っております。
 したがいまして、ただ、そうはいいましても、自治体の判断もあるわけですが、これは条例でどうされるかということになるわけですが、私どもはそういう考え方がありますので、殊更、基準を示すというふうな考え方は持っておりません。

○日笠勝之君(公明党)
 それから、先ほど同僚議員からも質問ありましたけれども、構成員は選任ですよね。選任、選ぶ、頭の首長がということでございますが、報酬は原則は無報酬と。原則があれば例外があるわけですが、実費弁償以外でですよ、実費弁償以外で例外として報酬は支給してもいいと、こういうふうになりますか?

○政府参考人(大野慎一君)
 法律の書きぶりは支給しないことができるというふうになっているので、支給することを妨げるものではないわけでございますが、これは私どもも、いろんな国会での御議論を踏まえつつではありますけれども、原則として支給しないよう周知徹底を図りたいと、こう思っております。

総務省の公式見解:合併特例区協議会の構成員は原則として報酬を支給しないように周知徹底を図りたい

七 合併特例区協議会の会長及び副会長

  1. 合併特例区協議会に会長及び副会長を置くものとし、その選任及び解任の方法は、規約で定め、その任期は、合併特例協議会の構成員の任期によるものとすること。(第三十七条第一項から第三項まで関係)
  2. 合併特例区協議会の会長は、合併特例区協議会の事務を掌理し、合併特例区協議会を代表するものとすること。(第三十七条第四項関係)

八 合併特例区協議会の権限

  1. 合併特例区協議会は、合併特例区が処理する事務及び地域振興等に関する施策の実施その他の@合併市町村が処理する事務であって当該合併特例区の区域に係るものに関し、合併市町村の長その他の機関若しくは合併特例区の長によりA諮問された事項又は必要と認める事項について審議し、合併市町村の長その他の機関又は合併特例区の長に意見を述べることができるものとすること。(第三十八条第一項関係)
  2. 合併市町村の長は、規約で定める合併市町村の施策に関する重要事項であって合併特例区の区域に係るものを決定し、又は変更しようとする場合においては、あらかじめ、合併特例区協議会の意見を聴かなければならないものとすること。(第三十八条第二項関係)
  3. 合併市町村の長その他の機関又は合併特例区の長は、1又は2の意見を勘案し、必要があると認めるときは、適切な措置を講じなければならないものとすること。(第三十八条第三項関係)
@Aから、「合併特例区協議会」は規約で定められた事務に要する予算の同意権や諮問された事項だけでなく、必要と認める事項について審議することができることになっています。”審議”というのが調査(質問)権を含むことは当然として、合併特例区の区域に係る必要な事項について審議するということと、予算の同意権をあわせ持つことで、従前の議会機能を保持するといってもいいでしょう。旧町域は定数特例で人口比例に応じた議員を選出することになっています。この屋上屋や矛盾に対してはどう解消するのでしょうか?また、先行する2町との差はどうなるのでしょうか?

予算の同意権(不同意)等についても国の解釈も明快ではありません。極めて矛盾の多い制度であることは間違いありません。

九 合併特例区の職員

合併特例区の職員は、合併市町村の長の補助機関たる職員のうちから、当該合併市町村の長の同意を得て、合併特例区の長が命ずるものとすること。(第四十条関係)
解釈としては、「合併特例区の職員は、新旧姫路市職員のうちから、姫路市長の同意を得て、合併特例区の長が命ずるということ。
似たような事例として議会事務局人事の事例があります。姫路市議会事務局の人事権は法的には議長にあり、市全体の人事管理を行っている市長部局でも議長の許可のない異動等の人事は不可能です。合併特例区長が実質的な人事権を持つことになるでしょう。
合併特例区の職員ついて

○高嶋良充君
  次に、この合併特例区の職員の関係なんですけれども、これは当該市町村長の同意を得て、合併特例区の区長が任命をすると、こういうことになっているというふうに思うんですが、労使関係上の使用者というのは新しくできたその市の市長なのか、それとも合併特例区の区長なのか、どちらですか?

○政府参考人(大野慎一君)
 今御指摘のこの使用者という労働基準法上の概念でございますけれども、こうした権限は原則として合併市町村の長が任命権者として行使することになるというふうに思います。
 ただ、合併特例区につきましては、これは設置者が限定されているというふうなこともありますので、合併特例区の職員の方は合併市町村の職員でもあり、かつその身分を持ったまま同時に合併特例区の職員の地位を有すると、こうなりますので、任命権者、その長でありますけれども、職務命令、具体的な職務命令などは合併特例区の区長さんが出すというふうな形になるわけでございます。

○高嶋良充君
 基本的な、言わば仕事上の労使の関係というのは特例区の区長だと、そういうふうに理解していいわけですね。
 じゃ、特例区に雇用される職員は、今も出ましたけれども、地公法の規定によって任用されることになると思いますが、それはそれでいいのかということと、臨時職員の任用についてはどのようなことを想定されているのか?

○政府参考人(大野慎一君)
 先ほどの答弁の中で一点補足しますと、合併特例区自体は職員の給与とか勤務条件、そういったことを決める条例制定権はないわけですから、条例の制定は、当然の、よく御案内のとおりですけれども、新市が行うという前提でございます。その上で、地公法上の規定によって特例区に雇用される職員も当然任用されると。なぜかといいますと、任命権者は市の市長さんであるわけでありますので、ということですが、臨時職員の任用につきましても同じように、地公法の臨時的任用職員あるいは非常勤・嘱託職員、こういったいろいろあるわけでありますが、同じように地公法の規定によって任用されるということでございます。
合併特例区の職員に対する職務命令、具体的な職務命令などは合併特例区の区長が出す

十 合併特例区の休日

合併特例区の休日は、合併特例区規則で定めるものとすること。(第四十一条関係)

十一 合併特例区の予算

  1. 合併特例区の長は、毎会計年度予算を作成しなければならないものとすること。(第四十二条第一項関係)
  2. 合併特例区の長は、予算の作成後に生じた事由に基づいて、既定の予算に追加その他の変更を加える必要が生じたときは、補正予算を作成することができるものとし、必要に応じて、一会計年度のうちの一定期間に係る暫定予算を作成することができるものとすること。(第四十二条第二項及び第三項関係)
  3. 合併特例区の長は、予算を作成したときは、合併特例区協議会の同意を得なければならないものとし、合併特例区協議会の同意を得たときは、直ちに当該同意を得た予算について合併市町村の長の承認を求めなければならないものとすること。(第四十二条第五項及び第六項関係)
合併特例区長は処理すべき事務に関する予算@や補正予算などAを編成する権限を持ち、B合併特例区協議会の同意を得て、C合併市町村長の承認を求めるということになります。
同意の有無を判断する協議会では、規約で定められた事務の予算だけでなく、合併特例区に係る施策等の審議(質問)が行われることは明らかですし、それを事務分掌規定にないとも言えません。合併特例区協議会に出席して、質疑や要望を受ける姫路市理事者の姿が眼に浮かびます。「それは、姫路市議会の所管していることですので」とも言えないのです(特例法第三十八条第一項−上解釈)。

十二 長期借入金等の禁止

合併特例区は、長期借入金及び債券発行をすることができないものとすること。(第四十三条関係)

十三 合併特例区の会計事務

合併特例区の会計事務は、合併特例区の長が行うものとすること。ただし、合併特例区の長は、必要があるときは、金融機関を指定して、現金の出納事務を取り扱わせることができるものとすること。(第四十四条関係)
@法人格を有するわけですから、当然といえば当然ですが、出納だけでなく指定金融機関を持つことも出来ます。

十四 合併特例区の決算

合併特例区の長は、毎会計年度、決算を調製し、出納の閉鎖後三月以内に、証書類その他政令で定める書類と併せて、合併市町村の監査委員の審査に付し、監査委員の意見を付けて合併特例区協議会の認定に付さなければならないものとすること。(第四十五条関係)
予算を編成するわけですから、決算も同様です。監査委員の審査を受け、意見をつけてもらって、再び特例区協議会の審議を受け、認定・不認定を決めてもらいます。

十五 合併特例区に対する財源措置

合併市町村は、合併特例区の運営について必要と認める予算上の措置を講ずるものとすること。(第四十六条関係)
「合併特例区の運営に必要な予算上の措置」をするのは、姫路市です。

十六 合併特例区の公の施設

合併特例区は、規約で定める公の施設を設けることができるものとし、公の施設の管理に関する事項は、合併特例区規則で定めなければならないものとすること。(第四十八条関係)
合併特例区にも指定管理者制度が適用されます。

十七 合併特例区の財産の処分等の制限

合併特例区は、次に掲げる場合には、合併市町村の長の承認を受けなければならないものとすること。(第四十九条関係)
合併市町村の条例で定める場合を除くほか、財産を交換し、出資の目的とし、若しくは支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付ける場合
財産を信託する場合
イ及びロに掲げる場合を除くほか、その種類及び金額について政令で定める基準に従い合併市町村の条例で定める財産の取得又は処分をする場合

十八 報告等

  1. 合併市町村の長は、必要があるときは、合併特例区に事務の報告をさせ、書類及び帳簿を提出させ及び@実地について事務を視察することができるものとすること。(第五十条第一項関係)
  2. 合併市町村の長は、合併特例区の事務の処理が法令の規定に違反していると認めるとき又は著しく適正を欠き、かつ、明らかに公益を害していると認めるときは、当該合併特例区に対し、当該事務の処理について違反の是正又は改善のため講ずべき措置に関し、A必要な指示をすることができるものとすること。(第五十条第二項関係)
@Aのように、合併市町村の長は、特例区の長に対して、指揮・監督ではなく、指示権限しかありません。解任等についても明確な規定がありません。

十九 合併特例区の監査

合併市町村の監査委員は、毎会計年度少なくとも一回以上期日を定めて合併特例区の事務を監査するものとすること。(第五十一条関係)

二十 合併特例区の解散

  1. 合併特例区は、設置期間の満了により解散するものとすること。この場合において、当該合併特例区を設けている合併市町村は、当該合併特例区に属する一切の権利義務を承継するものとすること。(第五十二条第一項関係)
  2. 合併特例区は、1の場合のほか、当該合併特例区を設けている合併市町村に係る市町村の廃置分合又は境界変更があった場合に解散するものとすること。この場合における合併特例区の権利義務の承継については、政令で定めるものとすること。(第五十二条第二項関係)

二十一 合併特例区協議会の同意を要する合併特例区規則等

合併特例区協議会の同意又は合併特例区協議会の同意及び合併市町村の長の承認を要する合併特例区規則について定めるものとすること。(第五十三条及び第五十四条関係)
条例と異なり、”規則”の制定は、合併特例区の長の権限で制定可能。ただし、特例区協議会の同意や合併市町村の長の承認が必要なものもあるという規定。

詳細については下記の通り
http://www.takesan110.com/seireishi/tokureiku2.html

二十二 住居表示に関する特例

合併特例区の区域における住居表示に関する法律に規定する住居を表示するには、当該合併特例区の名称を冠するものとし、合併特例区の設置期間の満了に際し、当該合併特例区の区域をその区域として引き続き設けられた合併関係市町村の区域による地域自治区の区域における住居表示に関する法律に規定する住居を表示するには、当該合併関係市町村の区域による地域自治区の名称を冠するものとすること。(第五十五条関係)

二十三 合併特例区が設けられている場合の地域自治区の特例

合併特例区を設けている市町村において地域自治区を設ける場合には、合併特例区を設けている区域については、地域自治区を設けないことができるものとすること。(第五十六条関係)

結論

合併協議で先行した2町とは自治の観点から見ても予算の同意権もなく権限も格段に少ない「地域審議会(下記参照)」の設置で合意しています。一方で、同じ日に合併する他の2町(一度協議から離脱した2町)に対してのみ、「合併特例区」を認め、区長を選任し、予算の同意権まで有する協議会を設けるということは、極めて歪な一市多制度になります。

また、このような地域自治制度の導入の議論は、事務調整の交渉の前に合併の前提として済ませておくべきで「合併特例区」の強行によって最終的に議会が否決する等の事態を招くことは、無原則な合併交渉にあると言わざるをえません。この場合の政治的な責任は極めて重いといえます。

合併特例区の予算の編成権(配分権)や同意権を合併特例区長や特例区協議会構成員という直接公選によらない人へ委嘱することも合併促進策とはいえ問題があります。あわせて合併特例区職員の一義的な人事権も保有します。歳入は姫路市が措置し、歳出の配分権は、合併特例区長が持つ。このような一市多制度は政令市昇格の担保がすぐそこにあって検討に値するかもしれませんが、政令市への展望が全くない今回の合併では認められません。

[参考]
地域審議会(特例法)

第二十二条 合併関係市町村の協議により、期間を定めて合併市町村に、合併関係市町村の区域であった区域ごとに、当該合併市町村が処理する当該区域に係る事務に関し合併市町村の長の諮問に応じて審議し又は必要と認める事項につき合併市町村の長に意見を述べる審議会(次項において「地域審議会」という。)を置くことができる。

2 地域審議会の構成員の定数、任期、任免その他の地域審議会の組織及び運営に関し必要な事項については、合併関係市町村の協議により定めるものとする。

3 前二項の協議については、合併関係市町村の議会の議決を経るものとし、その協議が成立したときは、合併関係市町村は、直ちにその内容を告示しなければならない。

4 合併市町村は、第二項の協議により定められた事項を変更しようとするときは、条例でこれを定めなければならない。

[参考]
地域自治区(特例法要綱)
十五 地域自治区の設置手続等の特例

  1. 市町村の合併に際しては、合併関係市町村の協議で定める期間に限り、合併市町村の区域の一部の区域に、一又は二以上の合併関係市町村の区域であった区域をその区域とする地域自治区(以下「合併関係市町村の区域による地域自治区」という。)を設けることができるものとすること。(第二十三条第一項関係)
  2. 市町村の合併に際し、合併市町村の区域の全部又は一部の区域に、合併関係市町村の区域による地域自治区を設ける場合においては、地域自治区に関して条例で定めるものとされている事項については、合併関係市町村の協議により定めるものとすること。(第二十三条第二項関係)
  3. 市町村の合併に際して設ける合併関係市町村の区域による地域自治区(以下「合併に係る地域自治区」という。)において、当該合併に係る地域自治区の区域における事務を効果的に処理するため特に必要があると認めるときは、合併関係市町村の協議により、期間を定めて合併に係る地域自治区の事務所の長に代えて区長を置くことができるものとすること。(第二十四条第一項関係)
  4. 区長は、地域の行政運営に関し優れた識見を有する者のうちから、合併市町村の長が選任するものとし、その職は、特別職とするものとすること。(第二十四条第二項及び第十四項関係)
  5. 合併に係る地域自治区の区域における住居表示に関する法律に規定する住居を表示するには、当該合併に係る地域自治区の名称を冠するものとし、合併に係る地域自治区の設置期間の満了に際し、当該合併に係る地域自治区の区域をその区域として引き続き設けられた合併関係市町村の区域による地域自治区の区域における住居の表示についても、同様とするものとすること。(第二十五条関係)