政令指定都市となるための要件から

2003年12月19日
 姫路市議会でも、今回の合併については政令指定都市を目指すという夢が語られることが多いのですが、実は、多くの場合その要件等については、あまり知られていません。これまで法的な要件である@地方自治法上の人口50万人以上という基準だけが一人歩きしている感もありました。現実はどうなっているでしょうか?
 実は法定要件とは別に、様々な条件が言われています。公式な基準としては、平成13年8月に内閣の市町村合併支援本部が決定した「市町村合併支援プラン」の中で、平成17年3月末迄の合併特例措置として『A大規模な市町村合併が行われ、かつ、A′合併関係市町村及びA″関係都道府県の要望がある場合には、政令指定都市の弾力的な指定を検討する』としていますが、これ以外にも、指定都市の条件には、人口密度都市機能整備、更には第一次産業の従事者が10%以下というような少し首をかしげる条件をクリアする総務省の審査基準(非公式)もあるようです。(堺市のホームページ http://www.city.sakai.osaka.jp/city/info/_sitei/seireiti.html から)
 上記の要件のうち、根拠法令と直近の国会答弁(下記参考)など法的な根拠のある要件にのみ限定して、政令市指定の条件を記すと…
政令市指定のための条件
@ 人口50万人以上[法定要件]
A 平成17年3月末迄に、大規模な市町村合併が行われる時であって[合併推進特例]A′合併関係市町村の要望 及び A″関係都道府県の要望のある場合
B 人口100万人を越える大都市または将来100万人になる可能性[従来要件]
C 五大都市(大阪・名古屋・京都・横浜・神戸)と人口や行財政能力で同等[理想要件]
を個別具体的に判断するというものです。
 ここで、姫路市の場合を考えて見ると、今回の合併によって@はクリアするものの、Aの時間制限やA″県の要望の点については難しく、BCについては、残念ながら将来にわたっても極めて難しいといえます。
 それでは、他都市の例はどうでしょうか?今回、上記Aの特例によって政令指定都市の指定を受ける静岡市と清水市が合併した新静岡市ですが、この合併のために人口基準が70万人に下げられたというほど、国(総務省)や県が今回の新静岡市の合併については支援したようです。これは同県内の浜松市に比べて県庁所在地である旧静岡市が脆弱なことから、基盤を挽回させるためという指摘もあり、国策的な特例指定という見方が大勢です。というのも、人口等で静岡市よりも多く、熱心に指定都市に向けて総務省に対して要望を行ってきた大阪の堺市がこれまで指定を受けられなかったからです。
 堺市は、単独でも79万人の人口があり、新静岡市の70万人を遥かに越えています。堺市は昭和58年に政令市を目指す組織を始めて立ち上げ、以降政令市の指定に向けて熱心に取り組んできた自治体です。人口は80万人を越えている時もありましたが、将来性の100万人要件(上記B)や支所行政の遅れなどで政令市に指定されなかったとされています。現在、隣接する美原町と法定協議会を設置し、大阪府の支援を受けながら、A特例による指定に取り組んでいるようです。現在のところ総務省の最終的な確認はとれていないようです。合併によって人口が80万人を越えても、指定は簡単でないことがわかります。
 それでは現在、人口48万人の姫路市はどうでしょうか?
 姫路市としては、@の法定要件をクリアし、その後の要件の緩和を待って政令市の指定を受けるという中長期的な展望を抱くというのが行政の考え方です。ただ、堺市の取り組みを見るまでもなく、@の法定要件以外に、明文化された条件、またそれ以外にも総務省の大変厳しい条件があるのです。姫路市にとしては、高砂市に断られたという現実に目をむけて、当面、中核市の雄として、中核市の権限拡大等を要求していくという現実的な対応にシフトするのが賢明な判断ではないかと思います。その上で、政令市基準が緩和されてから、政令市に向けた具体的な取り組みをすればいいのではないでしょうか。確かに、政令市になれば素晴らしいと思いますが、今の姫路市でそれを軽々に言うのは、時期尚早と感じます。夢を語ることは素晴らしいことですが、ただ国の政策変更を待つというものであれば、将来世代に責任をとるというものでもありません。政令市の指定という合併における唯一の夢についても厳しい判断をしていかなければならないでしょう。何より、30年後にも責任ある政治をするため、今回の合併については、当初の前提に立ち返り、将来に禍根を残さないように責任ある立場を志向していきたいと思います。

参考

 最近の合併に関する国会答弁

 (1)平成14年03月19日 参議院総務委員会

○渡辺秀央君
(現民主党参議院議員)
 政令指定都市要件の緩和については我が新潟県などはその対象に入ってくるようであるけれども、その内容についてちょっと確認をしておきたいと思うんですが、局長、いかがですか。
○政府参考人 芳山達郎君
(総務省自治行政局長)
 現行の政令指定都市は(昭和)三十一年に制度化されましたけれども、これまで、その沿革もありまして、C当初の指定五大市(大阪市 名古屋市 京都市 横浜市 神戸市)において、人口や行財政能力との関係でそれと同等の都市を指定するということでこれまで指定をしてきておるわけでございます。
 ただ、今度の合併との関係で申し上げますと、政令都市への移行に伴って都市機能の権限移譲が図られるということもありまして、市町村合併特例法が適用される平成十七年三月までの間に大きな、大規模な市町村合併が行われ、また関係の合併の市町村また関係の都道府県の要望がある場合には政令都市の弾力的な指定を検討するというようなことで、昨年八月の市町村合併支援プランにその旨を盛り込んだところでございます。指定都市の弾力化ということでございます。
 具体的に、現在、大きな合併として静岡の清水と静岡の七十万以上の合併がございますけれども、そういうところの強い要望がございますが、今後、今、先生御指摘の新潟市が今後どのような合併を行っていくのか、ないしはどのような規模になるかというのは定かでございませんけれども、具体的には、今後、各地域における合併の規模なり関係団体の要望、関係県の意向、そういうのを踏まえながら具体的個々別に御案内してまいろうということで考えております。
○国務大臣 片山虎之助君  今、市町村の制度も全部同じじゃございませんで、政令指定市、それから中核市、特例市と、こうなっておりまして、B政令指定市は、法律上は五十万以上でございますが、運用上は百万か百万になる可能性のあるところと。

 (2)平成14年10月31日 参議院総務委員会

○辻泰弘 民主党参議院議員に対する答弁
○副大臣(若松謙維君)  現在はこの三十万人以上ですと、一定の要件がありますと中核市という一つの制度がありまして、これはD今政令指定都市という制度がありますが、ある意味では、私どもも大臣とともにこの中核市の市長の方とお話ししましたが、皆様それぞれ、もう私たちは事務能力として政令指定都市のことができますと、そのくらいもう言っていただいておりまして、そういう意味ではミニ政令指定都市的なイメージに、という形も使えるのかなと、こういう考え方も私個人としては持っております。

 地方自治法

地方自治法第252条の19(大都市等に関する特例−指定都市の権能)
1 政令で指定する人口50万以上の市(以下「指定都市」という。)は、次に掲げる事務のうち都道府県が法律又はこれに基く政令の定めるところにより処理することとされているものの全部又は一部で政令で定めるものを、政令で定めるところにより、処理することができる。