議会の視察について


−市長に準じた驚くべき経費水準も判明。会派行政視察予算の廃止に向けての問題提起

−全てを特別職報酬等審議会の早期招集とあわせて本質的に解決すべき−
議会には他都市の先進事例を調査する目的で行政視察制度がある。視察と称する観光旅行や公金での飲み食いが報道される事例も多い。姫路市でも過去報道されたこともあったようだ。

現在の姫路市議会の行政視察の場合、条例や規則等に基づき実施され、視察報告書(議会事務局員作成)も議会に置かれ、視察先や目的等についても「議会報ひめじ」に掲載されているので公表自体はされている。ただし、ある職員の方が私に言ったのは「視察改革をお願いしたい」だった。この視察制度の改革を議会における最大の問題点だと考える方も多い。

私も一度、視察を企画したことがある(東京都武蔵野市・日野市・千葉県我孫子市)。このうち、補助金改革については本会議で他の議員から市長に対して提言されるほどインパクトのある政策だったし、HPで公開されている内容だけでなく、実際の担当職員の話は参考になるのも事実(他都市の人間だからこそ、市民や議会には公開しない「ここだけの話ですが…」という裏話が聞けることも多い)。

ただし、その費用対効果という観点から判断すれば、市長や行政職員(執行権者)が視察に行くほうが効果は高いというそもそも論があるのは当然として、私の友人の他都市の議員は、視察で”これ”という優れた施策があれば、水面下で市長に直接事例を報告し、導入を進言しているという(ある意味でブレイン)。先進事例の導入は行政職員にとって負担が多い場合があるし、公式な議員提案の採用は無用な混乱(他議員の嫉妬)を招くこともあり、市長のトップダウンで導入するほうが実現されやすいという。結局、先進事例を見るだけではなく、その導入を提言したり、条例化するための視察でなければならないということである。

私の視察に参加してきた実感として、都市の選定や意図については、企画する方の個人差が極めて大きいということである(委員会の場合、事務方が素案を作成。数案の中から委員会で決定。行政職員が同行する場合も多い。会派の場合、議員が場所を選定。会派担当職員が同行)。この差については、当選回数やこれまでの各種経験等もあり、埋められるものではないこともわかった。つまり、制度を変えなければならないということである。

私の視察内容や行程等は日記の通りだが、その他あまり知られていない全容を明らかにすると共に、過去の視察についても調査し、その予算や視察場所、他都市の状況についてもまとめたので公表したい。私としても、口利き文書化など本質的な案件の提案を含め、議会改革については可能な限り提案したつもりであるが、この視察制度改革については、簡単ではない(議会内で多数をとれる状況にはない)ことも事実。議会に対する信頼や透明性を確保するためにも取り組まなければならない課題の一つ。

調査によって驚くべき内容も明らかになった。まず議会自ら正すという観点から、軋轢も予想されるが公開する。
予算調査(類似都市の状況や財政、海外視察も含む)議会事務局別冊調査資料2003年2月
予算は、委員会行政視察・会派行政視察の年間予算が各20万円ずつあり、その中から、交通費、宿泊料、日当を全て支出している。夕食は日当や宿泊料の実費差額を原資に一括して夕食をとっている(出納等は議会事務局が一括して管理)。実費差額について調査したところ、驚くべきことがわかった。
※海外視察については予算枠を100万円としているようです。派遣経験がないので、改めて調査したいと思います。

日本一高い宿泊料19,100円(地方宿泊の場合、内閣総理大臣よりも高額に)
地方議員の報酬額で日本一高い東京都議会議員の宿泊料(甲地)で16,500円。漠然として高過ぎるという認識があり、具体的改革案として削減を提案していたが、私が調査したところ、姫路市議や市長の宿泊料は”日本一高い”ということがわかった(大阪市長、大阪市会議長も日本一高い)。

実際のところ、議員が旅費等を申請したり、出納をすることはない。条例上は市長に準じるとされて執行されているということもある。しかし、これはそんなことで済まされることではない。議員だけでも、適正な水準へ引き下げる必要がある。過去の事例を判断し、引き下げが必要である。

○姫路市議会の議員の報酬等に関する条例(昭和31年12月28日条例第23号)

3条 議長、副議長及び議員が公務のため市外に旅行したときは、その旅行について費用弁償として旅費を支給する。

2 前項に規定する旅費の額及び支給方法については、市長の例による

○姫路市職員等の旅費に関する条例(昭和32年10月10日条例第24号)
別表(第6条―第8条関係)※1食卓料の支給はありません。

区分

日当

(1日につき)

宿泊料

(1夜につき)

食卓料※1

(1夜につき)

1級

市長、助役、収入役又は常勤の監査委員の職にある者

3,800円

19,100円

3,800円

2級

地方公営企業の管理者、消防長又は局長その他これに準ずる職にある者

3,300円

16,500円

3,300円

3級

1級の項及び2級の項に掲げる者以外の者

3,000円

14,800円

3,000円

要は下の国家公務員の「内国旅費基準の表」の高いところから3つをそのまま採用しただけということである。姫路市の2級は大臣クラス、3級が国家公務員の審議官〜事務次官クラスの指定職の基準となっている。

1.日当、宿泊料及び食卓料[抜粋]
区 分 日当(1日) 宿泊料(1夜)
甲地方 乙地方
内閣総理大臣等 内閣総理大臣及び最高裁判所長官 3,800円 19,100円 17,200円
その他の者 3,300円 16,500円 14,900円
指定職の職務にある者 3,000円 14,800円 13,300円
9級以上の職務にある者 2,600円 13,100円 11,800円
8級以下4級以上の職務にある者 2,200円 10,900円 9,800円
3級以下の職務にある者 1,700円 8,700円 7,800円
備考 宿泊科の欄中甲地方とは、東京都、大阪市、名古屋市、横浜市、京都市及び神戸市のうち財務省令で定める地域その他これらに準ずる地域で財務省令で定めるものをいい、乙地方とは、その他の地域をいう。固定宿泊施設に宿泊しない場合には、乙地方に宿泊したものとみなす。


○大阪市 職員の旅費に関する条例 別表
区分
日当
(1日につき)
宿泊料
(1夜につき)
市長等
市長及び市会議長
3,800円
19,100円
その他の者(※1)
3,300円
16,500円
10級の職務にある者
3,000円
14,800円
9級の職務にある者
2,800円
14,000円
8級又は7級の職務にある者
2,600円
13,100円
6級又は5級の職務にある者
2,400円
12,300円
4級以下の職務にある者
2,300円
11,300円
※1に市会議員を含む

地方の人件費や旅費等は国家公務員に準じた扱いとされているものの一つのようだが、上表の通りである。その、宿泊料を設定するときに、内閣総理大臣並みの宿泊料等にあわせて改定したということだろうが、一体経緯はどういうものだろうか。しかし、あの大阪市よりも高かったというのには情けなくなる。

具体的改革案の中にも、その経費的な観点から改善提案をしているが、このたび過去の視察について調査したところ以下のような状況が明らかになった。

1.委員会行政視察先一覧 2.会派行政視察先一覧

近畿圏の視察がほとんどないということである。これは、近畿に先進都市が少ないからではない。近畿圏の場合、宿泊の必要がない日帰り出張になるからという理由だと考えられる。残念ながら、まず宿泊ありきという姿勢で視察先を決定するのではなく、施策によって視察先を選定するという考えに立たなければならない。

また、視察回数についても、実感として相当多いと感じるし、議会閉会中の一定の期間に視察が集中することで、視察結果を消化しきれない状況も生まれていることから、この際、会派行政視察予算そのものを廃止することを提案したい(現在、会派内で議論を行っています。報酬審議会とセットで改革を実施すべき)。