平成20年度予算特別委員会 議事録(平成20年3月7日)

○(竹内英明 委員)
  姫路市選出の民主党・県民連合の竹内英明である。25分という時間であるが、質疑させていただく。
 それでは、通告に基づいて、まず3次救急医療機関の整備についてお伺いする。県の役割である3次救急、最後のとりでとよく言われるが、3次救急医療機関の整備について伺う。

 実は、私の父親の話で恐縮であるが、2年前の3月に勤務中に脳梗塞で倒れ、この3次救急医療機関である県立姫路循環器病センターに救急搬送をしていただいた。一時、覚悟してくれと先生に言われたわけであるが、そこにおいでの先生方、またスタッフの皆さんの懸命な処置、手術によって今も、病床にはあるが、命をつなぎとめていただいている。

 この3次救急、また県立姫路循環器病センターには父も感謝しているし、また私も感謝をしている。ここが今、大変苦しい立場に追い込まれているということで、私は恩返しではないが、きちんとこちらを充実させる、こうした観点から質問させていただきたいと思う。  まず、兵庫県下の消防長会の懸念についてお伺いする。  今から4年前の2004年9月9日、兵庫県下の救急搬送を担う市町や消防本部の責任者の集まりである兵庫県下消防長会の平井健二会長から、消防救急救助対策の充実強化についてという要望が井戸知事あてに提出されている。

 その中で、救命救急センターの充実として、「中播磨、西播磨地域の中核であるべき救命救急センター(県立姫路循環器病センター)は、整形外科、小児科及び婦人科がなく、本年6月からは内科も不在となり、救命センター機能が低下している状況である。当地域の3次医療機関の体制整備を早急にお願いしたい」ということが記されている。  あえて、県下の問題に個別の県立姫路循環器病センターの体制整備について、県下の消防長会として県の井戸知事に対して要望されたものである。  4年前から救急医療を担当する消防救急の現場から、こうした中播磨、西播磨地域の救命センター機能の低下についての対応要請が出ていたことに、今、驚いている。そしてこの要望は、残念ながら毎年続いて行われて、昨年にも8月31日付で出されている。そしてこれはだんだんと強い口調になっている。

 昨年の要望書では、「救命救急センター(県立姫路循環器病センター)の充実について、西・中播磨の救急医療の中核である救命救急センターは、3次医療機関として指定されているにもかかわらず、循環器と脳外科しか対応できず、多発外傷患者の受け入れができていないのが実情で、救命救急センターとしての機能を果たしていない」、このように断言をされている。  さらに、「地域内の医療機関と連携し、救命救急機能を補完することとされているが、現実的には、地域内の医療機関においても医療スタッフの減少などにより補完することは困難で、遠方の医療機関に搬送するケースがふえており、このことは救命率の向上に寄与していない。救命救急センターは、大規模事故発生時を初め、重篤な患者に対し、独自に対応する必要があり、診療体制の拡充や救急車の配備など、拠点となり得る救命救急センターとして、早急に体制の整備をお願いしたい」とある。

 この要望から4ヵ月後、昨年12月6日未明に姫路で大変痛ましい事件が起こった。吐血した姫路市の男性が救急搬送される際に、手術中や専門医不在などを理由に19の病院から受け入れを断られ、男性は救急車内で心肺停止となり、約2時間に搬送先の赤穂市民病院で死亡が確認された、あの痛ましい事件である。  メディアにも大きく報道された。最後のとりでとして3次救急を担う県立姫路循環器病センターは、救急隊からは、最初から対応困難であるということで搬送先から外されていたと言う。県としてもその後、搬送要件を緩和するなど対応されているが、県立姫路循環器病センターでは「麻酔科医が少ないので、緊急手術等に対応できない」と言われている。  また、要望書で特に触れられている多発外傷患者とは、交通事故などで頭部、胸部、腹部、四肢など身体区分に同時に2ヵ所以上に一定以上の重症な損傷を有し、放置すれば生命に危険が及ぶ外傷で、多発外傷を独立した範疇として扱う臨床的意義は、多発外傷の治療には複数の診療科が関与することが多く、各損傷に対する治療の優先順位の決定と治療法の選択に高度の判断を必要とするからである。

 こうした高度な医療は、3次救急医療で担わなければならないとされているが、よく言われている消化器系疾患だけではなくて、一般の2次後送病院では対応が難しい、こうした最も高度な対応も、当初から対応困難であるとして依頼先から外しているようである。  私はこれまで、4ヵ年にわたるこうした要望に兵庫県がいかに対応してきたのか、まずお伺いしたい。

○(高岡健康局長)
  県立姫路循環器病センターの救命救急センターについては、県下消防長会からの要望を受け、一つには循環器科医師の増員、二つには救急外来室の充実として救命救急措置室の拡充、ベッドの増床、三つには救急外来に係る超音波診断装置、人工呼吸器等の医療機器の整備、四つにはMRI、血管造影装置等の高額医療機器の更新などを行い、体制の強化を図ってきた。その結果として、救急受け入れ患者数は、平成15年度4,582人から平成18年度4,862人と増加傾向にある。

 この間、県では、メディカルコントロール協議会など救急搬送に係る検証の場を通じて、医療機関と消防機関との連携を図ってきた。また、昨年12月の姫路市での搬送事案を受けて、救命救急センター連絡会議の開催や、姫路市の救急医療体制検討会議への参加などにより、3次救急医療を含めた救急医療体制の強化に取り組んでいるところである。

○(竹内英明 委員)
  対応をとっていただいていることで、それをさらに進めていただきたいと思うが、現実には、先ほど私が申し上げたとおり、診療科で受けられない分野があるということであるが、播磨圏域全体の3次を担うということで、今、播磨は中、西、北、東とあるが、これは全体で186万人の人口である。循環器病センターがこうした状態で、さらに下にある1次救急、2次救急、これで何とか3次の穴があいている部分をフォローしていかなければならないということであるが、実は、中播磨圏域の2次救急においては、輪番後送病院の中で内科、外科の合計4病院が勤務医不足等の理由で今年度末をもって撤退することを表明されているということであり、残る9病院で輪番が回せないんではないか、こんなことも最近大きく報道をされている。

 開業医や神戸大学医学部の医師派遣で維持している1次救急、姫路市休日・夜間急病センターも患者数の急増に悲鳴を上げている。市医師会の空知顕一副会長は、昨年と同じ問題がいつ起きても不思議ではない、このように述べておられる。このままでは再び命にかかわる痛ましい事故が起こりかねない。

 この播磨の医療問題を初め、本県の医療問題については、新聞などでも大きく取り上げられ、その要因、背景など、関係者に詳しく取材された内容もあった。私も自分なりに二度とこうしたことがあってはならないと考え、調査をしてみたが、実は本県の状況、本県では循環器病センターのほかに兵庫医科大学病院、神戸市立医療センター中央市民病院、公立豊岡病院、兵庫県災害医療センターの5病院が救命救急センターと指定を受け、さらに県立柏原病院、県立淡路病院が指定はないものの、救命救急センターとしての機能を有し、3次救急医療体制に位置づけられている。  ここに、厚生労働省の医政局指導課長から発せられた「疾病又は事業ごとの医療体制について」という資料がある。一定の指針というのを国で定めたものであるが、この事業の一つである救急医療のうち、第3次救急医療の役割について定めている。その内容は、「24時間365日、救急搬送の受け入れに応じること」、そして「傷病者の状態に応じた適切な救急医療を提供すること」、また「緊急性、専門性の高い脳卒中、急性心筋梗塞等、重症外傷等の複数の診療科領域にわたる疾病、幅広い疾患に対応して高度な専門的医療を総合的に実施する。その他の医療機関では対応できない重篤患者への医療を担当し、地域の救急患者を最終的に受け入れる役割を果たす」と記されている。

 また、こうした救急対応については不採算となることが多いことから、国は診療報酬を増額するとともに、県も含めて一定の補助をすることにしてきた。この3次の救命救急センターに対する補助金については、県立病院等への補助は三位一体の改革で財源移譲をされている。民間病院等へは国庫補助、県の補助金が残っているが、診療報酬の増額や補助金の算定基準については厚生労働省がつくっている。  これは、まず病床数を基本とする基準額に、専門医等の配置の有無の基準を加え、医療機関の充実段階を三つのランクに分けて、一定の比率で補助金を算定するというものである。この三つの段階に分かれる充実段階という評価であるが、現在の救命救急センター5病院、これが指定を受けているが、充実段階の直近の評価がどうなっているか、教えていただきたい。

○(今井健康生活部参事兼医務課長)
  救命救急センターの評価については、各センターからの診療体制や患者受け入れ実績等に関する報告結果を点数化し、当該点数を基本として、各施設の充実段階をA、B、Cに区分したものである。  本県の平成19年度の評価結果は、神戸市立医療センター中央市民病院、兵庫県災害医療センター、兵庫医科大学病院、公立豊岡病院、県立姫路循環器病センターの5救命救急センターのすべてにおいて、A評価を得ているところである。

○(竹内英明 委員)
  今ご答弁があったとおり、5病院についてはすべてAランクと、3段階のうち一番高い評価ということであるが、実は私、調べてみると、兵庫県もすべてAであるが、全国に今指定を受けているのが201あるが、この201すべてがAランクであり、すべての救命救急センターが我々からすれば充実をしている、充実段階のAランクにあるんだと思っている。

 ただ、私がさっき申し上げたとおり、循環器病センターは、残念ながらすべての機能が充実しているとはとても言いがたいということで、補助金の基準や診療報酬に係る国の基準と実情は少し違うんだということもはっきりしている。  実は、この調査をしている中で、私、県内の救命救急医療の関係者の方から、「県立姫路循環器病センターは救命救急センターとしての機能は十分でないから補助金を減額すべきではないのか」という疑問の声を聞いた。また、救急患者を断らない方針を掲げている他の病院の中には、救急を断らない病院は報酬面で待遇されるべきだ、救急患者をすべて受け入れられない同センターにかわって、3次救急の指定見直しの検討を求めている病院もある。  こうした意見の背景には、救命救急センターの指定を受けると同じ診療内容であっても診療報酬が加算され、補助金も支給されるということがある。
 調べてみると、確かに、県立病院であるが、センターの指定を受けると一般財源化分に加え、3次救急を維持するための繰出金として、姫路循環器病センターには2億47万円が一般会計から繰り出されていた。これは、高度救命救急センターとして機能し、また充実しているとされる県立災害医療センターの2億834万円とほぼ同額である。

 直近の2006年度の決算では、姫路循環器病センターを除く県立11病院がすべて赤字、合計で63億円の赤字となっている一方で、姫路循環器病センターについては8,000万円の黒字を出しているが、この会計の状態を見ると、周囲の声というのもあながち間違ってはいないと私は思う。  これについては、救命救急センター運営費の補助を受けるのであれば、それに見合う体制をつくらないとだめであると感じる方、またできなければ3次指定を返上しなければならないと感じておられる先生方、病院もある。  実は、先日報道があった。新潟県の中越地方の長岡赤十字病院というのがある。ここが、救命救急センターの指定の返上を検討しているということであった。ここは麻酔科医不足に陥って、何とかこれまで近隣の3次病院と連携して対応してきていたが、「24時間365日の役割を果たせない状況で補助金を受けていることや、3月末でさらに2人の麻酔科医が退職することから、病院が昨年12月に、県に指定返上を打診していた」と報道されている。院長のインタビューであるが、心苦しかったんだろうと思っている。

 この事態を重く見た新潟県や日本赤十字本社、新潟大学医歯学総合病院が、麻酔科医3人を派遣することを決めて、この病院の救急医療体制は維持されることになって、指定返上という動きはストップしたが、私は、先ほどの補助金の問題がある。今、循環器病センターが機能していない、それによって補助金をもらっている、これがおかしい、こう言うつもりはない。私は、今機能してない救急を、この2億円の補助金――繰出金であるが、これを使って機能を充実させてほしい。このために、一般会計から繰り出しているんだと思っている。  だから、知事部局の健康生活部としても、姫路循環器病センターの救命救急の充実に向けて、こうしたお金を使っていくということで出されているわけであるから、このセンターを3次のまま充実させ、そしてしっかりと患者を受け入れられる体制をつくっていただきたいと私は考えている。  このまま機能充実がなくて、繰出金をそのままにしておけば、これは周囲の方からおかしいんではないかという批判が起こっても、私はおかしくないと思うし、また3次指定を見直せという声まであるわけであるから、こうした声を含めて、私の意見にどのように考え対応していくのか、お聞かせいただきたい。

○(今井健康生活部参事兼医務課長)
  県立姫路循環器病センターは、心疾患と脳血管疾患を中心に対応しており、日本人の死亡原因の2位、3位を占める心疾患、脳血管疾患が救急対応を必要とする疾患であることを考慮すると、同センターが救急医療に果たしている役割は大きいものと考えている。  昨年12月、姫路市での搬送事案を受けたプレショック状態での救命救急センター等への搬送について、消防等関係機関に周知したところであり、県立姫路循環器病センターにおいてもプレショック状態での搬送を受け入れることとしている。  心疾患と脳血管疾患以外の重篤疾患については、姫路赤十字病院、あるいは新日鐵広畑病院など近隣医療機関との連携のもと対応しており、今後は、これらの近隣医療機関とのさらなる連携の強化を図っていくこととしている。

○(竹内英明 委員)
  今のご答弁の中では、3次指定を見直すとか補助金を減らすとか、またはいわゆるほかの病院の批判等についてもご答弁がなかったが、逆に、私は3次をそのまま当然引き継いでいくというご答弁だったと受けとめさせていただく。

 次に、今、姫路市だけではなくて、周辺でも同じ状況だと思うが、県と市と医師会等で救命救急センター等の働き等について、特に中播磨ではこういう緊急事態が起こったので、三者で話をしているという状況がある。  その中で、新型救命救急センターというものがよく議論をされており、実は、県議会の議論の中、また各種の勉強会、先ほどご答弁あった救急医療体制検討会、これは中播磨のものであるが、この議論の中でも、10床程度の新型救命救急センターの新設についての話が出ていた。これは、ミニ救命センターなどとも呼ばれているものである。本年1月1日現在で、全国で17ヵ所整備されているが、兵庫県下では未整備である。

 実は、ミニではない、普通の救命救急センターは、厚生労働省の示す基準では人口100万人に一つという基準がある。現在、播磨全体――西播磨、中播磨、北播磨、東播磨、この全体の圏域の人口、先ほど申し上げた186万人で、2009年には新加古川病院の救命救急センターが開設されて、これまでの播磨圏を二つに割って、北播磨と東播磨の人口は合計100万人であるから、ここでちょうど分かれて別の3次救急体制がスタートすることにより、つまり、残る中播磨、西播磨86万人で、姫路循環器病センターのほかにミニ救命センターが設置可能であるかどうなのか、これを確認をしておかなければならないと思う。

 条件つきではあったが、現実に救急医療体制検討会の中で一度手を挙げられた民間病院が姫路市内に一つある。循環器病センターを3次に指定したままで、さらに民間中心での新型の施設整備について、県の意向のほか、国の整備費補助やその後の運営費補助制度が受けられる見込みがあるのか、こういうことが大きな課題であると思う。

 また、姫路市内に既に第3次救急医療機関が設置されており、さらにその機能が今十分でないという段階で、同じ姫路市内にもう一つ新型救命救急センターの開設が厚生労働省に許可されるのか。東京都では、国が指定しなくても単独で整備をするというところもあるが、この点も含めて設置の実現性についてご答弁いただきたい。

○(細川健康生活部長)
  新型救命救急センターについては、面積、人口規模等の地域の状況に応じ、よりきめ細かく救命救急に対応するために設定された仕組みである。病床数については、30床が標準的な規模である救命救急センターに対し、10床程度の病床で同じレベルの機能を有することになっている。  全国には、現在17ヵ所の新型救命救急センターがある。その担当している人口も、5万人レベルの救命救急圏域のものもある一方、高度救命救急センターと新型救命救急センターが並立して存在している医療圏域もある。

 中播磨及び西播磨圏域の人口が約86万人であり、現在の県立姫路循環器病センターが主に脳・心血管の急性障害に対応している状況であること、もう一点は姫路赤十字病院や新日鐵広畑病院、あるいは独立行政法人姫路医療センターなどの病院の診療レベルから考えると、若干の人員あるいは機器類の充実により救命救急に対応できるレベルにあると考えており、新型救命救急センターの整備の見込みがあると考えている。  新たな整備が可能であるという前提のもとに、地元姫路市や関係機関とも調整しながら、その必要性も含めて検討したいと考えている。  また、先ほど五つの救命救急センターに対してプレショックの患者を高嶋委員からどういう形で受け取るのかというご質問もあったが、この新型救命救急センターも含めて、3次救急のブロックを設定しているが、そのブロックを超えて3次救急医療機関に直接搬送するべく、県内の五つの救命救急センターの連絡会議を昨年の事案を受けて開催しているし、今後も継続的に開催することで、救命救急の中でも広範囲熱傷や指の断絶といったものについて、非常に特殊な救命救急技術を要する。こういうものについては症例数も少ないことから、連携して対応することが必要と考えている。

○(竹内英明 委員)
  今、細川部長からご答弁をいただいた。新型救命救急センター、中播磨、西播磨、人口86万人ということで、十分国の設置の許可をいただける見込みがあるということで、今の別に挙げられた病院については、国の独立行政法人であり、民間病院であり、その他の病院である。そういったところと、これは本来は3次救急の県の事務である。そこと2次救急との信頼関係を含めてきちんとしていただかなければ、なかなか簡単に受けていただけるものでもないでしょうし、その点では、今、中播磨で救急医療体制検討会があって、そこで提言がなされるということを聞いているので、その提言をきちんと踏まえて糧としていかなければならないと思う。

 そして最後に、兵庫県立姫路循環器病センターの救命救急センターのホームページを見て、私、そこの表現を今ここで読ませていただく。  「当センターは、3次救急医療施設であり、一般に治療を受ける患者様は他の医療機関からの紹介や救急隊の判断によって当センターへ搬送される。すなわち、一般の救急病院で対応が困難な患者さんに対し、より高度な救急医療を提供する使命を有している。このため、いかなる時間帯であっても重症患者の治療が行えるよう、救急医学に精通した専門のスタッフが24時間体制で診療に当たっている」。  私は、このとおりの医療機関として、今おっしゃられた3次の救命救急センターとしての役割をきちんと果たす、そしてそれを補完するところを新型の救命センターを設置をする。今、部長に答弁していただいたとおりに、私は、すぐにでもこの中播磨、西播磨の救命救急センターの充実、これは本当に急いでやっていただきたいということをお願いを申し上げ、私の質問を終了する。どうもありがとうございました。